研究課題/領域番号 |
17K19452
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
青木 航 京都大学, 農学研究科, 助教 (10722184)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
キーワード | C. elegans / neural network / functional cellomics / reverse optogenetics |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者が提案する方法論『リバースオプトジェネティクス』を応用し、線虫C. elegansのロコモーション(運動)を制御する神経ネットワークの動作原理を解明することである。本研究において、線虫の302個のニューロンのうち、どのニューロンがどのロコモーションに影響するのかという網羅的データセットを構築する。さらに、そのデータセットからニューラルネットワークモデルを構築し、神経ネットワークの普遍的動作原理を導き出す。本年度においては、リバースオプトジェネティクスを実装するために、以下の2つの研究を実施した。 1. ひとつひとつのニューロンでオプシンをランダムに発現する線虫ライブラリの構築 線虫の302個のニューロンにおいて、ランダムにオプシン-GFP融合タンパク質が発現したライブラリを構築した。具体的には、Cre/lox配列を線虫に導入し、ヒートショックによるCre発現依存的にオプシンがランダムに発現する線虫ライブラリを準備した。またこの線虫ライブラリを用いることで、光に依存してさまざまな行動パターンを示す線虫を取得可能なことがわかった。これらの成果に基づき、現在リバースオプトジェネティクスを提唱する論文を投稿中である。 2. 線虫の動画解析と「動き」の解析 線虫の行動を客観的に評価するために、線虫をトラッキングしながら動画を撮影するシステムを構築した。このシステムを用いることで、光照射下における野生型およびオプシン発現線虫のロコモーションモチーフの比較を実施している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、リバースオプトジェネティクスの実装と、動画による線虫行動の定量化システムの構築に成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
線虫のロコモーションに影響するニューラルネットワークの解析を進めるためには、オプシンを適切な確率でラベリングできなければならない。なぜなら、あまりにも多数のニューロンがラベリングされると、あるニューロンがどのような役割を担っているかが判別できなくなるからである。そこで現在までの研究をさらに深化させ、望みの確率でオプシンをラベリング可能なシステムの構築を進める。具体的には、lox配列をシングルコピーでゲノムに挿入するとともに、Creと反応しにくいlox変異体の利用を検討する。これら2つの要素を組み合わせることで、302個のニューロンのうち望みの数のニューロンを確率的にラベリング可能になると期待される。 次に、さまざまな確率でオプシンをラベリングした線虫ライブラリを用いて網羅的な行動評価を行い、ロコモーションを制御する神経ネットワークの動作メカニズムを解明する。具体的には、既に解明されている全ニューロンの相互接続情報(コネクトーム)を基盤情報とする。次に、オプシンで制御されたニューロンを「インプット」とし、非標準的なロコモーションモチーフを「アウトプット」設定する。得られたデータセットをもとに、機械学習による各ニューロンの重みづけを行い、302個のニューロンのうち、どのニューロンを刺激すれば、どのロコモーションモチーフが誘起されるかを予測できるモデルを構築する。モデルの精度は、モデルから演繹される予測に対して、新しい観測データのフィッティングで検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
微小な金額のため、次年度の研究費と合算して使用する予定である。
|