研究課題
中枢神経系の神経回路形成過程で、ニューロンの軸索は標的細胞や周辺細胞から発せられる誘引・忌避分子の誘導を受けて遠隔の標的に投射することが明らかになっている。一方脳組織の構造的性質や形態形成運動に伴う引張・圧縮などの応力分布の動的変化も軸索伸長に影響すると考えられる。本研究では、小脳顆粒細胞が双極性の軸索を小脳の左右両方向に伸長する現象が、組織内の物理的刺激による軸索ガイダンス機構によるものと仮説を立て検証を行った。基質の構造に依存するガイダンス機構の探索のため、ナノインプリント法を用いて様々な幅・深さのline & spaceを加工した培養基質を作成し、小脳顆粒細胞と海馬錐体ニューロンを分散培養して分化させ、軸索走行を観察した。その結果顆粒細胞は溝の幅に関わらず平行に軸索を伸長したが、錐体ニューロンは溝の幅200nm程度を境に垂直から平行に軸索伸長する方向を変えることが明らかになった。高解像ライブ観察技術を用いて成長円錐上の接着複合体の大きさと分布の解析を行ったが、基質の屈折率の問題で蛍光観察ができなかったため、走査電子顕微鏡解析を行い、成長円錐の超微形態を詳細に解析した。その結果、成長円錐の糸状仮足はパターン幅200nm以下だとlineの尾根上を伸びていることがわかった。一方成長円錐中心部のアクチン骨格配向には極性は見られず、成長円錐中心部で網目状に分布していた。さらに小脳形態形成運動に伴う組織伸展の機械的刺激が軸索伸長に及ぼす影響を検証するため、小脳顆粒細胞を弾性膜上に培養して引張刺激を負荷し、双極性軸索の伸長方向に及ぼす影響を解析したが、引張刺激に対し軸索伸長方向に有意な変化は見られなかった。一方押圧刺激で弾性膜にシワを寄らせ、細胞の運動性変化をライブ観察する実験を行い、シワの方向を変えるとアクチン再編成が起こり、細胞極性が変化することを明らかにし、論文発表した。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件)
Neuroscience Research
巻: 138 ページ: 59~69
10.1016/j.neures.2018.09.008
Cell Reports
巻: 24 ページ: 95~106.e9
10.1016/j.celrep.2018.06.013
Langmuir
巻: in press ページ: in press
10.1021/acs.langmuir.8b02972
Proceedings of the Japan Academy, Series B
巻: 94 ページ: 337~349
10.2183/pjab.94.022
The Cerebellum
巻: 17 ページ: 701~708
10.1007/s12311-018-0984-8
Journal of Experimental Neuroscience
巻: 12 ページ: 117906951878915
10.1177/1179069518789151