研究課題/領域番号 |
17K19456
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
下野 昌宣 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (30552137)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 神経 / 脳 / ネットワーク / 局所回路 / 多電極計測 / ビックデータ |
研究実績の概要 |
本プロジェクトの目標は、脳神経系において、(1)データにもとづいてモデル形成をし、(2)モデル形成に有効なデータを蓄積する事である。脳マクロでの理論研究(データ解析+モデル分析)において、我々の伝達速度を推定し、脳構造配線とミリ秒スケールでの早い脳内ダイナミクスを比較した研究成果が論文として発刊された[Shimono, Hatano, 2018]。 申請者は、H29年度の終盤より京都大学医学部への異動をし、自身のラボ-実験スペースを保有し、生理実験を極めて円滑に行える様になった。それと同時に卓越研究者としての採択が決まり(https://www.hakubi.kyoto-u.ac.jp/jpn/02_mem/08shimono.shtml)、その研究予算で高額な世界最高数の計測点数をほこる多電極計測装置を購入できた。そのため本プロジェクトでも、卓越プロジェクトとの相乗効果が期待されるさらに効果的な予算使用を志向した。たとえば、神経活動を蛍光計測でも多電極計測でも活用できて意義深いため、両方の計測で用いられる高性能の国産スライサーを本予算から購入した。 多電極システムでの実験はすでに始まっており、rodentのacute sliceの新皮質から電気活動を安定して計測できる化学プロトコルを見出した(意外と世界的に稀な到達点である)。これにより、この萌芽の期間中で、新規な実験パラダイムの発表に続いて、詳細なモデリングを可能とするビックデータを着実に蓄積して、大局的ルールの発見的研究へと続く道筋が敷かれた。また、本年度中で招待講演を約5件,対談1件を含む講演,学術発表を行った。その内の一件はYoutubeにてシェアされている様である(https://www.youtube.com/watch?v=9a-dczDZsAk&t=2s)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度では、新しいラボの立ち上げが中心的なissueとなってきた。その立ち上げは、思った以上に順調に進んでおり、本プロジェクトの残りの2年中での成果へと結実できる機運が高まっている。モデリングは現実を反映する形で構築されなくては意味がなく、data drivenなアプローチは必須である。今年度に用意できた実験基盤は、そのアプローチを力強く進めるものとなるものである。また、異動の多忙な中でも、複数の講演を行う事もできている事から、プロジェクトは順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、世界最高数の計測点を有する計測機を含む実験系の確立をほぼできた事は意義深い。まだ公開はできないが、実験系に新規性を盛り込むポイントをいくつか用意している。相対的な優劣はつけがたいが、インフォマティクス的に外に存在するデータを解析する事よりも、これから二年においては、モデリングを志向しつつも、自らそれに必要なデータ蓄積に力を注ぐ事が、より有望な展開が期待されると思われる。それらの成果を論文などでまとめてゆくとともに、その先に、データ公開用にデータベースの構築などを視野に入れてゆく事となるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
本萌芽研究プロジェクトの進行途中で、京都大学への異動と、自らがラボの主催者となる大きな転機があった。そのため、京都大学内部での交流や、ラボの立ち上げに比重が高まり、海外の共同研究者らとの交流の重みが比較的に軽くなり、交通費が予想より減少した。ただし、本年度のしわ寄せにより、国際交流は来年度以降に増えると予想されるため、来年度への移行する事とした。
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