研究課題/領域番号 |
17K19458
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
和氣 弘明 神戸大学, 医学研究科, 教授 (90455220)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | ミクログリア / シナプス |
研究実績の概要 |
本課題では、感覚刺激、運動学習において生理学的なミクログリア突起の動きによるシナプスへの接触でシナプス活動ひいては神経回路活動にどのように影響し、シナプス機能、可塑性、数を制御するかを検証する。次にこの制御機構の破綻で発達障害、精神・神経疾患を惹起しうるかを考える。これまで、2光子顕微鏡を用いた生体イメージングによってシナプス活動とミクログリアを同時に可視化し、ミクログリアの接触時にシナプス活動が増加することを示し、さらにこのミクログリアによるシナプス活動の修飾はミクログリアをリポ多糖類で活性化させることで消失することを明らかにした。またミクログリアをジフテリア毒素によって遺伝的に時期特異的に除去できるマウス(Iba1-tTa::TetO-DTA)を用いることで、ミクログリアを除去すると神経細胞活動の同期性が減少することから、ミクログリアによるシナプス活動の修飾は神経細胞集団の同期性に寄与していることを示した(論文投稿中)。これらのミクログリアは全身性の炎症時にどのように脳内に作用するかを検証するために、全身性エリテマトーデスモデルマウス(MRL-lpr)を用いてミクログリアの変化を観察した。MRL-lprでは中枢神経系の血管の透過性が炎症によって局所的に増加していることが観察され、さらにその部位におけるミクログリアの血管周囲への集積が認められた。集積したミクログリアは骨髄のマクロファージに由来するもではなく、中枢神経系内のミクログリアが血管周囲に移動したものであることが考えられた。血管周囲のミクログリアの数の増加に伴い、血管周囲以外のミクログリアの数が減少していることがわかった。またこれによってミクログリアのシナプス修飾などの生理機能が十分に発揮されずに中枢神経系の症状を引き起こす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り研究は進捗しており、本年度には論文投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ミクログリアによって機能修飾されたシナプスの運命を継続して追跡するとともに、その微細構造レベルでの変化を電子顕微鏡で追跡する。またミクログリアを欠落させることによりシナプスの選別、機能修飾が行われないと仮定すると、入力に対する出力相関も変化することが予想される。そこで感覚刺激、訓練前後の個体において、大脳皮質運動野2/3層に入力のある視床にチャネルロドプシンをコードする遺伝子をAAVによって導入し、大脳皮質の2/3層からユニット記録を行い、光刺激したときおよび通常覚醒下における活動電位の発生をみる。局所フィールド電位記録を取ることによって局所の活動との比較も行う。これを正常の動物と比較することにより単一細胞の入出力パターンの恒常性がどのようにミクログリアによって維持されるかを検討する。
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