研究実績の概要 |
2.私たちはこれまで2光子顕微鏡を用いた生体イメージングによって、ミクロ グリアがシナプスに1時間に1度約5分程度直接接触することを明らかにしている(Wake et al., 2009)。本研究では全身免疫異常に伴うミクログリアの血液脳関門に対する制御機構を明らかにした。自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウス(MRL/lpr)およびリポ多糖類の腹腔内投与を行ったマウスをモデルマウスとして用いた。2光子顕微鏡を用いた長期イメージングによって、LPS投与一日後からミクログリアは血管に向かって遊走しすることがわかった。さらに血液脳関門(BBB)の透過性を評価するために、サイトカインなどと同等の大きさの分子量である10kDaを経静脈的に注入し、その脳実質への漏れ込みを蛍光輝度の変化量で評価した。LPS投与4日後より有意に漏れ込みを認めることがわかった。そこでミクログリアの遊走とBBBの透過性の相関を検証するために、ミクログリアを遺伝的に除去したマウスを用いて、その評価を行ったところ早期にはミクログリアはBBBに保護的に、後期にはBBBの障害的に作用することがわかった。これらの責任分子としてタイトジャンクションの形成に寄与する分子、および貪食に寄与する分子を上げることができた。さらにミクログリアの活性化阻害剤であるミノサイクリンを用いることによって、BBBに対するミクログリアの障害的作用を阻害することができた。このような研究によってミクログリアのBBBに対する統合的理解を得ることができた。
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