研究課題
2019年度はカレハ島を含む腹側線条体の細胞特性を明らかにするため、遺伝子組織化学及び免疫組織化学を行った。ニッスル染色での所見によるとカレハ島は嗅結節に島状に点在する構造で細胞質の少ない顆粒細胞で主に構成されている。この中にGABA作動性神経細胞を同定した。さらに、カレハ島細胞の分子特性を明らかにするために遺伝子発現プロファイリングに着手した。具体的には、カレハ島細胞特異的にリボソームタンパク質ーGFP融合蛋白質を発現させたマウスを作成し、前脳広域および腹側線条体特異的組織を採取した。腹側線条体サンプルに対して免疫沈降実験およびRNA-seqを行い、遺伝子発現特性からカレハ島特異的な遺伝子発現を解析したところ、前脳広域サンプルに対して免疫沈降サンプルではGFP遺伝子の排他的な発現が確認された。さらに予備的な検討では、ドーパミン3型遺伝子や神経細胞特異的な遺伝子群の特異的な発現がみられたことから、これらのサンプルはカレハ島細胞の遺伝子セットとして矛盾しないと考えられた。研究期間全体を通じて実施したこれらの研究を通して、得られた知見は以下のようにまとめられる。1)ドーパミン3型遺伝子トランスジェニックマウスを用いた遺伝子改変実験により、カレハ島特異的な遺伝子操作を可能にするマウス系統の確立に成功した。2)マウスカレハ島は腹側線条体の一部で一酸化窒素合成酵素を特異的に発現していた。3)カレハ島と支配血管との立体的相互関係を明らかにするため、透明化法の改良を行い、カレハ島と栄養血管の同時可視化に成功した。4)遺伝子組織化学・免疫組織化学によりカレハ島細胞はGABA作動性神経細胞を含むことを明らかにした。5)免疫沈降法とRNA-seq法を組み合わせることでカレハ島特異的な遺伝子発現解析系を確立し、その妥当性を評価した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Neuropharmacology
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http://neurobio.hiroshima-u.ac.jp