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2017 年度 実施状況報告書

大脳皮質の遠距離興奮性結合形成の細胞系譜依存性

研究課題

研究課題/領域番号 17K19467
研究機関生理学研究所

研究代表者

吉村 由美子  生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 教授 (10291907)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワード大脳皮質視覚野 / 領野間神経結合 / 細胞系譜
研究実績の概要

哺乳類大脳皮質の機能的神経回路の成熟には、初期的な神経回路が遺伝情報に基づいて構築され、引き続き、その回路が生後の経験に依存して可塑的に調整される2段階の機構が必要である。胎生期に同じ神経前駆細胞から発生したクローン細胞は、生後に選択的に神経結合を形成することが報告されている。これらの報告では、同じ発生コラムに属する近傍の神経細胞間の結合を対象にしているが、遠距離神経結合についても細胞系譜依存的な神経結合が見られる可能性がある。本計画では、大脳皮質の領野をつなぐ遠距離興奮性神経結合の特異性に、発生期の細胞系譜が関与する可能性を検討し、胎生期に規定される新たな神経結合特異性を見出すことに挑戦する。胎生期の大脳皮質の形成が始まる時期の神経幹細胞から生まれた神経細胞は、生後の大脳皮質において、同一の発生カラム内のみならず、異なる発生カラムにも分布することが知られている。我々は、緑色蛍光蛋白遺伝子を導入したiPS細胞をマウス受精卵に移植したキメラマウスを解析し、生後の大脳皮質において複数の発生カラムが蛍光標識されることを確認した。同一の神経幹細胞由来の発生カラムと異なる神経幹細胞から発生したカラムを識別するために、緑色蛍光蛋白GFP遺伝子をコードしたiPS細胞に加えて、赤色蛍光蛋白RFP遺伝子を導入した新たなiPS細胞を樹立した。現在、これらのiPS細胞をそれぞれ一個ずつ同時にマウス胚に移植したキメラマウスを作成している。色違いのiPS細胞を同時に移植することで、別個の神経幹細胞由来のクローン細胞群を色分けして標識することを試みている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

緑色蛍光蛋白遺伝子を導入したiPS細胞をマウス受精卵に移植したキメラマウスの脳を組織学的に解析し、生後の大脳皮質において複数の発生カラムが蛍光標識されることを確認した。また、赤色蛍光蛋白遺伝子を導入したiPS細胞の樹立も行った。緑と赤、どちらかの蛍光蛋白遺伝子が導入されたiPS細胞を一個ずつ同時にマウス胚に移植したキメラマウスを作成しており、同じ神経幹細胞から発生した神経細胞と異なる神経幹細胞から発生した神経細胞を色分けできているかを調べているところである。標識が上手くいった場合には、神経結合特異性の解析を開始することができる段階にある。

今後の研究の推進方策

これまでに樹立したiPS細胞によりキメラマウスを用いて形態学的、電気生理学的手法により神経結合を調べ、遠距離興奮性神経結合の細胞系譜依存性の解析を進める。形態学的解析には越シナプストレーサーである遺伝子改変型狂犬病ウイルスを利用する。電気生理学的解析では、キメラマウスの大脳皮質より作製したスライス標本上にある緑色あるいは赤色蛍光蛋白を発現する複数の神経細胞から同時にパッチクランプ記録を行い、細胞系譜特異的な遠距離興奮性神経結合がみられるか、みられた場合はその結合強度を評価する。

次年度使用額が生じた理由

キメラマウス飼育のための飼育ラックを発注しているが、このラックは受注生産のため納品までに時間がかかっている。

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公開日: 2018-12-17  

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