研究課題
神経細胞での新規なタンパク質合成は、神経刺激によって誘導されるため、特定の神経機能や情動および記憶が関わる行動にも深く関与し、そのタンパク質合成の異常は、精神障害や発達障害にも関与することが最近の研究で示唆されている。しかし、遺伝子レベルで、その詳細にはいまだ不明な点が多い。令和元年度では、これまでに開発してきた新たなmRNAおよびtRNA塩基配列を調べるための技術、およびその塩基配列を一塩基レベルで詳しく調べるためのバイオインフォマティクスのツールを用いて、さらなる翻訳解析を行った。特に、認知機能に障害をもつ精神障害モデルの生きたマウスを用いて行動試験を行い、その行動に連動した翻訳プロファイルを調べることで精神障害の発現機序解明を目指した。その結果、その精神障害モデルマウスでは、野生型のマウスと比べて、神経関連遺伝子の一部に、顕著な翻訳のリズムの障害がみられることを新たに見出した。また、その神経関連遺伝子はシナプス機能の維持に必須の遺伝子群であった。さらに、それらの翻訳のリズムのマウス間での違いが、行動に連動しさらに変化することを見出した。また、これらの結果から明らかになった、翻訳モードが著しく異なる遺伝子群に関して、培養神経細胞でもその翻訳モードの違いが確認できた。これらの結果は、ある神経関連遺伝子群において、タンパク質の「量」よりも「質」の違いが、認知・精神発達障害に関わることを示唆している。
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Biomolecules
巻: 9 ページ: 680
10.3390/biom9110680