研究課題/領域番号 |
17K19470
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平澤 典保 東北大学, 薬学研究科, 教授 (80181155)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 抗アレルギー薬 / TSLP / 上皮細胞 / 標的分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、アレルギー応答を誘発、増悪化するサイトカインである Thymic stromal lymphopoietin (TSLP)の産生を選択的に抑制する化合物として申請者らが見出したリード化合物の標的分子並びに作用機構を明らかにすることを目的とした。初年度は標的タンパク質の探索、並びに作用機構について解析した。 1)リード化合物結合タンパクの探索:本リード化合物をビーズに結合したアフィニティービーズを作製し、細胞ライゼートから結合タンパクを回収して、LC/MSで同定した。複数のタンパク質が同定されたため、さらに細胞内環境中で結合するタンパク質を同定するために、クリック反応を応用した標的分子の解析法について種々条件を検討し、リード化合物の結合タンパク質の細胞内分布を可視化した。また化合物のビーズへの結合の最適条件を確立した。また標的分子が既知で、本化合物と部分的に構造が類似する化合物が、TSLPの産生を抑制することを見出し、その化合物の標的分子が本リード化合物の標的分子である可能性を示唆した。2)作用点の同定:本化合物の種々シグナル分子への効果を検討し、特にNrf2/Keap1システムを活性化することを明らかにした。そこで、Nrf2およびKeap1の発現をsiRNAで抑制した場合の本化合物の効果を検討したが、その抑制効果は減弱しなかった。この結果から、本化合物のTSLP産生抑制作用は、Nrf2/Keap1システムとは関係無いことが示唆された。さらに主な作用ステップは転写抑制であり、RNAの安定性、翻訳、分泌抑制ではないことが示唆された。 今後さらに、標的分子の同定、並びに転写抑制作用機構について解析を進め、新規作用機構を持つ抗アレルギー薬の開発を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本化合物の標的分子の同定を試みたが、複数存在し、どのタンパク質がTSLP産生に関わっているのか同定するには至らなかった。そこであらかじめ計画していたように、細胞内環境で本化合物と結合するタンパク質を同定するためのクリック反応を用いた解析方法を確立した。また、構造活性相関の解析を進め、タンパク質結合のネガティブコントロールとして使うことが可能な、構造が類似しながら抑制作用を示さない化合物を発見したこと、さらに標的分子が明らかにされていて、かつリード化合物と部分的な類似構造をもつ化合物がTSLP産生を抑制することを明らかにした点は計画以上の成果である。作用機構については、作用ステップの同定は予定通り進み、またシグナル経路の同定についても計画通り進め、本化合物が作用する候補経路を見出した。結果的にその関与はTSLP産生抑制とは無関係であることが示唆されたが、本研究は概ね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
概ね、研究計画通りに実施する。 1)構造類似で、抑制作用を示さない化合物とリード化合物の結合タンパク質との比較により、TSLP産生抑制に関わる標的分子を探索する。さらに 2)リード化合物と部分的な類似構造をもちTSLP産生抑制作用をもつ既知化合物の標的タンパク質とのドッキングシュミレーションにより、本リード化合物の標的分子となるかどうかを解析する。1あるいは2より候補標的分子が絞られた場合には、siRNA等でそのTSLP産生における役割、関与するシグナル経路の役割を明らかにする。 また、本分子が標的である可能性が高い場合、さらに特異的に結合する化合物を探索して構造最適化を図る。 以上から、TSLPの産生を特異的に阻害する化合物の構造最適化のための基盤を確立するとともに、構造最適化をさらに進め、抗アレルギー薬の開発候補品を探索する。
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