研究課題
本研究では、アレルギー応答を誘発、増悪化するサイトカインである Thymic stromal lymphopoietin (TSLP) の産生を選択的に抑制する化合物として申請者らが見出したリード化合物の標的分子並びに作用機構を明らかにすることを目的とした。 (1) 本リード化合物をビーズに結合したアフィニティービーズを作製し、細胞ライゼートから結合タンパクを回収して、LC/MSで同定した。複数のタンパク質が同定されたため、さらにより活性の強い化合物を探索した。その結果、約10倍強い化合物を見出し、本化合物を用いて再度、セルライゼートより結合タンパク質を解析した。その結果、同化合物で結合が抑制される少なくとも3つのバンドを見出し、LC/MSで解析を進めている。2)作用点の同定:本化合物の種々シグナル分子への効果を検討し、特にNrf2/Keap1システムを活性化することを明らかにした。そこで、Nrf2およびKeap1をsiRNA法で発現を低下させた場合の本化合物の効果を検討したが、その抑制効果は影響しなかった。これらの結果から、本化合物のTSLP産生抑制作用は、Nrf2/Keap1システムは関係していないことが示唆された。さらに RNA の安定性に対する効果を解析したところ、本化合物は転写を阻害するactinomycin Dよりも強力にTSLP mRNAレベルを低下させること、この抑制作用はactinomycin Dと併用することにより打ち消されることが明らかになった。これらの結果は、本化合物は転写を抑制する以外に、何らかのmRNAの誘導を介して TSLP mRNA の分解を促進することを示唆する。このように、本化合物はこれまで報告されていない全く新規な作用機序によりTSLPの発現を抑制していると考えられる。今後さらに、miRNAの網羅的な解析等を行う予定である。
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