研究課題/領域番号 |
17K19481
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
武元 宏泰 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (10709249)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 薬物送達システム / 核酸 / 高分子 / バイオマテリアル |
研究実績の概要 |
本研究では、高い細胞質移行性を有する高分子を開発し、核酸へと結合することで、核酸の細胞外から細胞質への効率的な到達及び薬効の飛躍的向上を実現することを目的とする。平成29年度では、ポリアミノ酸骨格を有し、種々の電荷密度を有する高分子ベタインを合成した。中でもカルボン酸とエチレンジアミンとからなるベタイン構造は、生理的中性pHでは細胞取り込みを抑制するが、エンドソームや腫瘍環境に相当する弱酸性pHでは細胞取り込みが向上することが見出された。この挙動は、滴定試験における電荷分布解析においても実証された。さらに、当該化学構造は細胞膜への相互作用はするが、細胞膜を破壊することなく物質を細胞内へ導入可能であることもわかった。このことから、開発される高分子の高い生体適合性がうかがえる。また、アニオン性構造やイオン性基間のスペーサー長を調節することで、異なるpH応答性挙動を示すことが明らかとなった。これに関し、主鎖の骨格をポリグルタミン酸からポリリシンへと変更しても、その挙動に変化はなかったことから、それらの挙動はベタイン構造に起因することも明らかとなった。例えば、スルホン酸由来のベタインとカルボン酸由来のベタインとでは、スルホン酸由来のベタイン構造の方が細胞取り込みを誘導しやすく、かつ、細胞内分布においても細胞質へと移行している様子が示唆された。これらの成果は、論文としての発表や学会での発表として結実している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリアミノ酸を骨格として、特定のベタイン構造が細胞内取り込みに寄与することが明らかとなった。さらに、ポリアミノ酸としてポリリシンおよびポリグルタミン酸の双方において同等の傾向が確認されたことから、ベタイン構造に由来した挙動であることが確認された。これらの成果は論文および学会での発表として結実している。
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今後の研究の推進方策 |
開発されたベタイン構造において、その構造の最適化を行う。イオン性基間のスペーサー長等に関する議論を深く進めることで、当該現象におけるより包括的な理解へとつなげる。また、核酸と実際に結合することで、その細胞取り込み挙動と薬効を改良する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度において、高分子の効率的な合成手法の糸口が見出されたため、平成30年度以降の研究進展を見据えてその合成手法の確立に注力した。結果として、平成29年度において当初予定していた高分子のうちいくつかの合成と評価を平成30年度以降に行うことになった。一方で、平成30年度以降は平成29年度において確立された新規合成手法に基づいて大変効率的に高分子を獲得出来るため、当該研究期間内の研究進捗に大きな影響はないと考えている。
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