研究課題
新規薬物の依存性や報酬効果の予測は行動薬理学的試験が実施されているが、これらの行動試験では特殊技術や実験装置が必要であり、実験結果を得るまでに長期間を要する。より簡便に薬物の依存性や報酬効果を予測できる実験手法の開発が望まれている。依存性薬物は脳内の報酬回路を活性化して報酬効果を示すことが知られており、中脳腹側被蓋野から側坐核に投射する中脳辺縁系ドーパミン作動性神経系は報酬回路を構成する重要な神経系の一つである。細胞外に放出されたドーパミンは側坐核の投射神経である中型有棘神経細胞(MSNs)に作用する。コカインやモルヒネなど依存性薬物の作用部位はそれぞれ異なるが、いずれの薬物もMSNsの細胞活動とそれに続く遺伝子の転写調節を介して精神依存を形成すると考えられている。レポーターアッセイは転写因子の応答配列をルシフェラーゼや蛍光蛋白質などのレポーター遺伝子に付加することで転写活性を容易に測定することができる実験系であり、培養細胞系で汎用されている方法である。この手法をマウスに応用すれば新規薬物の依存性や報酬効果を予測できると考えられる。平成29年度は、マウスの側坐核で起こるリン酸化反応を探索し、コカインを処置した際にPKAを介するシグナル経路が活性化されることを確認した。また、培養細胞を用いてin vitroのスクリーニングを実施し、PKA活性化薬の処置によりルシフェラーゼの発現が増加することを確認した。スクリーニングの結果を基に、転写因子応答配列の候補を絞り込み、至適化を行った。平成30年度は、マウス線条体にCRE-luciferase遺伝子をパッケージングしたAAV (AAV-CRE-Luc) を感染させ、in vivo イメージングを行った結果、コカイン、モルヒネおよびメタンフェタミンの投与により発光強度が生理食塩水投与群に比べて増加した。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
Neurosci. Res.
巻: - ページ: -
10.1016/j.neures.2018.10.007
Neurochem. Int.
巻: 122 ページ: 8-18
10.1016/j.neuint.2018.10.008.
J. Neuroinflammation.
巻: 15 ページ: 295
10.1186/s12974-018-1332-0.
Sci. Rep.
巻: 8 ページ: 14413
10.1038/s41598-018-32840-1.
巻: 8 ページ: 13046
10.1038/s41598-018-31390-w.
Sci Rep.
巻: 8 ページ: 9221
10.1038/s41598-018-27626-4.
Gene Brain Behav.
巻: - ページ: e12478
10.1111/gbb.12478.
Glia
巻: 66 ページ: 1034-1052
10.1002/glia.23299.
J. Neurochem.
巻: 145 ページ: 19-33
10.1111/jnc.14274.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/laboratory/clinical-pharma/clinical-pharma/neuropsycho-pharmacology/