研究課題/領域番号 |
17K19484
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平芳 一法 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 講師 (80199108)
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研究分担者 |
小出 隆規 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70322253)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | コラーゲン / RNA aptamer |
研究実績の概要 |
コラーゲン3重らせん上のアミノ酸配列は、複数のタンパク質と特異的に相互作用 (Protein-Protein Interaction, PPI)することで、血液凝固など病態にも直結する多彩な生理機能を発揮する。本研究では、1.コラーゲンを標的としたRNAアプタマーを複数取得し、それらの結合特異性、親和性および結合する3重らせん上のエピトープ配列を同定する。2.さらにin vitroでアプタマーがコラーゲン上で競合するタンパク質を明らかにし、薬効が期待されるアプタマークローンをリストアップする。ことを目的として、進行中である。 平成29年度はコラーゲン(I型全長)に対するRNA aptamerの作成を試み、いくつかのクローンを取得することに成功した。Aptamerの取得にあたっては、コラーゲン分子が生理状態と同等の構造を維持する条件を検索するため、温度、バッファーの組み合わせで、種々の条件設定を行い、ある特定の条件下で、ほぼ期待できる結果を得ることができた。その条件下でAptamerの選別を行い、いくつかのクローンを得ることができた。シーケンスの結果、一般的な分子に対するRNA aptamerの場合と異なり、分子間で核酸配列に特定の偏りを観察することができなかったが、いくつかの分子では共通すると思われる配列も観察された.この結果はコラーゲン分子が巨大であり、構造上いくつかの結合部位が想定されたことから、当初予想していたとおりであった。現在、それぞれのAptamer分子のコラーゲンに対する結合状態を解析している。コラーゲンという巨大かつ3重鎖を形成する分子を対象とした挑戦的研究であるため、結合状態の解析も従来通りの解析方法で解析することは困難である。現在、コラーゲンの構造に基づいたいくつかの方法を試みている。今年度の前半でそれぞれの分子の結合様式が解析できるものと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の目標であったコラーゲンに対するRNA aptamer分子の取得に成功した。コラーゲン分子が巨大かつ3重鎖を形成し、非生理条件では容易に重合体を形成してしまうため、RNA分子との結合をコラーゲンの生理状態で実施することが困難であったが、温度とバッファー条件を検討することにより、結合実験そのものは成功した。結合様式が実用に耐えるものであるか、またその結合様式がいかなるものであるかをあきらかにしない限り、当初の目的であった創薬へつながるRNA aptamerの取得とならない。昨年度中に実施するはずであった定性的な結合状態の解析が、コラーゲン分子固有の特徴により、遅れ気味であったが、現在進行中であり、今年度初期の段階で解析可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アプタマーが認識する3重らせん上のエピトープの決定の決定を行い、予想されるPPI(タンパク質間相互作用)阻害活性について重点的に実施する。これによりin vitroにおいてアプタマーがコラーゲンとのPPIに起因する特定の生物機能を阻害できることを示す。 ①in vitro血管新生モデル(PEDF、ヘパラン硫酸と競合するアプタマーを中心に検討) ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)はコラーゲン上で約一晩培養することにより、管腔形成が観察される。この系に、因子への競合阻害が期待されるRNAアプタマーを添加することによって、管腔形成阻害(あるいは促進)効果がみられるかどうかを調べる。 ②in vitroコラーゲン線維化阻害(すべてのアプタマーについて検討する) すでにコラーゲンの非らせん領域である末端テロペプチドに対する抗体が、コラーゲンの線維化阻害活性を有することが知られ、ケロイドの治療薬として興味を持たれている。3重らせん部位に結合するアプタマーのin vitroでの自発的なコラーゲン線維化に対する阻害活性をミクロプレート上での濁度測定法によって調べる。
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