コラーゲン3重らせん上のアミノ酸配列は、複数のタンパク質と特異的に相互作用することで、血液凝固などの生理作用に直結する多彩な機能を発揮する。本研究は、コラーゲンを標的としたRNAアプタマーを取得し、それらの結合特異性、親和性および結合する3重らせん上のエピトープ配列を同定し、in vitroでアプタマーがコラーゲン上で競合するタンパク質を明らかにすることで、薬物のリードとしての応用が期待されるアプタマーをリストアップすることを目的として実施した。 コラーゲン(I型全長)に対するRNA aptamerの選別を試み、人工的に合成した完全にランダムな配列30nt(平成29年度)、40nt(平成30年度)を含むDNAライブラリ―を作成し、そこから得られたRNAをもとに試験管内分子進化法(SELEX)を実施することで、いくつかのクローンを取得することに成功した。Aptamerの選別にあたっては、コラーゲン分子が生理状態と同等の構造を維持する条件を検索するため、温度、バッファーの組み合わせで、種々の条件設定を行い、ある特定の条件下で、ほぼ期待できる結果を得ることができた。その条件下でAptamerの選別を行い、いくつかのクローンを得ることができた。シーケンスの結果、一般的な分子に対する選別の場合と異なり、クローン間で配列に特定の偏りを観察することができなかったが、いくつかの分子では共通すると思われる配列も観察された.この結果はコラーゲン分子が巨大であり、構造上いくつかの結合部位が想定されたことから、当初予想していたとおりであった。しかし、コラーゲンという巨大かつ3重鎖を形成する分子を対象とした挑戦的研究であるため、結合状態は、従来の方法で解析することが困難であり、現在、SPR、EMSA、分子干渉等の方法をもとに測定法の改良を行い、得られたクローンのコラーゲンに対する結合を解析中である。
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