研究課題/領域番号 |
17K19485
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松崎 勝巳 京都大学, 薬学研究科, 教授 (00201773)
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研究分担者 |
矢野 義明 京都大学, 薬学研究科, 講師 (60402799)
星野 大 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (70304053)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 膜タンパク質 |
研究実績の概要 |
膜中でフレキシブルで動的な構造変化を起こしていると考えられる。膜タンパク質の動的構造を捉えるには、結晶中ではなく膜環境での測定が必須である。溶液NMRは構造変化ダイナミクスの高分解能測定が可能な手法であるが、立体構造が決定可能な分子量は最大で80kDa程度に制限される。膜タンパク質NMR測定にブレークスルーをもたらすには、生体膜を構成するグリセロリン脂質の部分構造を持ち、かつ高分解能NMRに適した小さいサイズの膜タンパク質―脂質複合体を形成するような新規可溶化剤が切望される。これまでに、脂質二分子膜と似た配向で膜タンパク質周囲を覆い可溶化できるようなデザインを持つリン脂質ベースの可溶化剤Cholyl-PCが、7回膜貫通(7TM)型タンパク質であるバクテリオロドプシン(27 kDa)を60 kDa程度の可溶化体として安定に可溶化でき、50℃で少なくとも1週間程度ネイティブ構造を保持可能なことを見出している。本研究ではこの可溶化剤の溶液NMR測定への有用性を実証するために、複数の膜タンパク質の同位体標識サンプルを調製し、NMR測定を行う。高濃度のCholyl-PC溶液は粘度が高く、可溶化したバクテリオロドプシンのNMRシグナル強度が十分に得られない問題点があることが明らかになった。Cholyl-PC間に疎水性相互作用が働くことで、粘度が上がったと考えられた。そこで、可溶化体間の反発によって粘度上昇を防止する目的で、コール酸部分を硫酸化した新規Cholyl-PC誘導体の合成を行った。一硫酸化体(Cholyl-PC-mono-sulf)と二硫酸化体(Cholyl-PC-di-sulf)の合成を行い、蛍光法によりいずれも150 μM程度のcmcを持つ事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cholyl-PCより優れた性質を持つ可能性がある硫酸化誘導体の合成に成功した。これを用いて、Cholyl-PCでは難しい高濃度での可溶化剤存在下でのNMR測定の可能性が開けた。
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今後の研究の推進方策 |
硫酸化体のサイズ、バクテリオロドプシンの可溶化能を調べた後、重水素化標識可溶化剤の合成を試みる。また、ユビキチン融合体を用いて、インフルエンザAのM2プロトンチャネルS31N変異体の大量発現を行う。
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