研究課題
本研究では、様々な細胞種が混在しているヒトiPS細胞由来の分化神経細胞から、興奮性神経細胞や様々な種類の抑制性神経細胞を、細胞種特異的にライブマーキングするシステムを構築することを目的としている。平成30年度は、parvalbumin、VGulT1、VGluT2、GAD65、GAD67等の細胞種特異的なマーカータンパク質をコードする遺伝子のプロモーター領域と蛍光タンパク質Venusを用いた細胞種特異的マーキングシステムの妥当性を評価するとともに、新たなマーキングシステムの開発を実施し、以下の結果を得た。1)抑制性神経細胞を特異的にマーキングすることを目的として、GAD65もしくはGAD67をコードする遺伝子のプロモーター領域により発現を支配されるVenusを発現する組み換えレンチウイルスをヒトiPS細胞由来の分化神経細胞に感染させたところ、用いたiPS細胞のクローンによりVenus陽性細胞数に大きな差違が観察された。2)抑制性神経細胞のマーキングシステムの改良のために、転写因子を過剰発現する分化方法を導入した。この方法では全細胞のうちおよそ30%程度が抑制性の神経細胞であることが明らかになった。また、GAD65、GAD67のみならずDLX5等の抑制性神経細胞に発現する分子群をコードする遺伝子を用いたシステムの開発を実施した。3)興奮性神経細胞を特異的にマーキングすることを目的として作製したVGluT1-Venus、VGluT2-Venusについては、その特異性に問題があることが明らかとなり、用いるプロモーター領域を改変する、もしくは分化方法を改良する等の、さらなる開発が必要であることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本研究で開発した神経細胞種特異的ライブマーキングシステムを統合失調症の多発家系患者等由来のヒトiPS由来分化神経細胞に適用するにあたり、当初の予想に反し、従来用いてきた分化技術では、クローン間の誤差が大きいことが明らかになったが、分化方法の改良に着手することができた。また、新たなマーキングシステムの開発はおおむね計画通りに実施することができた。
これまでに開発した神経細胞種特異的ライブマーキング技術をさらに改良し、細胞種特異性をさらに高めるとともに、iPS細胞を神経細胞に分化させる基盤技術開発も併せて実施し、これまで達成されていないヒトiPS細胞由来分化神経細胞の細胞種特異的解析を実施する。
前年度までに開発した神経細胞種特異的ライブマーキングシステムを統合失調症の多発家系患者等由来のヒトiPS由来分化神経細胞に適用するにあたり、当初の予想に反し、従来用いてきた分化技術では、クローン間の誤差が大きいことが明らかになり、計画に変更が生じたため、未使用額が生じた。今年度は、分化技術の開発を引き続き実施するとともに、神経細胞種特異的ライブマーキングシステムの開発を実施する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 9件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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