研究課題
神経因性疼痛と炎症性疼痛は、様々な疾患により引き起こされる耐え難い慢性疼痛であり、グルタミン酸とプリン作動性化学伝達が制御する。本研究課題は、化学伝達の開始点と種類を決定する小胞型神経伝達物質トランスポーターに着目し、鎮痛薬の開発を目指した新しい化学伝達制御法を確立することを目的とする。これまでに、(1)小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)は神経因性疼痛と炎症性疼痛の発症に関与すること、(2)VNUT特異的阻害剤としてクロドロン酸の同定、(3)クロドロン酸はアロステリック薬剤であること(VNUTにある塩素イオンとケトン体の代謝スイッチを制御する)、(4)低濃度のクロドロン酸は神経・グリア細胞や免疫細胞からのATPの開口放出を完全に阻害すること、(5)低用量のクロドロン酸はVNUTを標的として強力な鎮痛効果、さらに、抗炎症効果を発揮すること、(6)この効果は既存薬よりも強力な薬効を示し、副作用は少ないことを見いだした。以上の結果から、ケミカルバイオロジーによるプリン作動性化学伝達の新しい制御法を確立することができたと結論した。クロドロン酸はすでに骨粗鬆症治療薬として承認されており、そのVNUT阻害効果は骨粗鬆症治療効果よりも低濃度で観察されたため、ドラッグリポジショニングによる新しい創薬展開が期待される。医薬品開発されれば、鎮痛・抗炎症薬では世界で初めてのトランスポーター創薬となる。
1: 当初の計画以上に進展している
プリン作動性化学伝達の新しい制御法を確立し、論文報告することができた。そのため、当初の研究計画以上に進展していると判断した。
小胞型神経伝達物質トランスポーターの新しい阻害剤を探索し、鎮痛薬の新たなリード化合物の同定を目指す。
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