研究課題
本研究課題は,長時間に渡る小胞体ストレス環境が及ぼす細胞の質的な変化を解くことを目的としたものである.ヒトの病態,例えば神経変性疾患や癌などは,発症までに一般的に長期間要すると考えられている.そこで,本研究では小胞体ストレスの中,小胞体ストレス応答(UPR)(シグナル)そのものではなく,その活性化後に惹起される神経細胞の機能的/質的変化を追求し,病態との関連性を明らかにすることに挑戦した.まずはじめに,私たちは,ユビキチンE3リガーゼの基質としてAβ分解酵素(プロテアーゼ)の一つを同定することに成功した.本E3酵素によって,当該基質タンパク質はポリユビキチン化されるものの,プロテアソームによる分解を受けないことが明らかとなった.そこで,ユビキチン鎖の特徴を解析するために,遺伝子改変型ユビキチンを発現させて,細胞内での動向を検討した.その結果,プロテアソーム感受性のK48ではない,ある種のユビキチン修飾が起こっていることが明らかとなった.本基質タンパク質の酵素活性を人工的Aβペプチドの水解活性から求めたところ,E3リガーゼの有無,ユビキチン修飾の有無によって,有意に抑制されることがわかった.さらに,興味深いことに,本基質タンパク質は通常では細胞質全体に存在しているものの,E3リガーゼ共存下では核周囲にドット状に集積することを認めた.この局在は抗ユビキチン抗体陽性でもあった.また,本基質タンパク質はエクソソームを介して細胞外に分泌されるとの報告があったため,ユビキチン修飾との関係を調べた.まず,ユビキチン化部位を欠失させた変異体を発現した細胞では,細胞外に分泌される酵素量が有意に低下することがわかった.したがって,小胞体ストレス環境下では,ある種のE3リガーゼが高発現し,基質をユビキチン化することで細胞内局在を変化させて,酵素活性を調節している可能性が示唆された.
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Int. J. Mol. Sci.
巻: 20(7) ページ: E1783
10.3390/ijms20071783.
Biol. Pharm. Bull.
巻: - ページ: in press