研究課題
生体高分子のメチル化を司るSAM-MTaseは、がん、ウイルス、原虫増殖に関与する酵素である。したがってSAM-MTaseによる酵素反応を高効率かつ細胞レベルで可視化することは、メチル化が関連した疾患に対する創薬の基盤技術となる。しかし、可視化を可能とする低分子蛍光プローブ分子の開発は進んでいない。本研究では生体内メチル化現象の制御に大きく関っている酵素として、アデノシルホモシステイン (SAH) 加水分解酵素(SAH hydrolase)を取り上げ、その酵素機能を高効率かつ細胞レベルでの可視化に応用可能な低分子蛍光プローブ分子を開発し、その応用展開を図ることを目的とした。そこで平成30年度における研究では前年度から検討してきたNーSアシル基転移反応を利用したSAH hydrolase機能の直接的可視化を可能とする低分子蛍光プローブ分子の開発を行った。アシル転移型プローブは、蛍光発色が全く見られ無かった。この原因は酵素の基質結合部位が狭く、合成プローブが酵素ポケットに入れないことが主要因ではないかと仮定し、脱S-アルキル化を受ける部位のコンパクト化を行った。すなわち、酵素反応による脱S-アルキル化に伴い、カルボニルオキシエチルサルファニル構造を生成し、チイラン構造への変化を伴い、蛍光色素を遊離する構造である。チイラン形成型プローブ分子がSAH hydrolaseにより変化を受け、蛍光を発するとの知見を得た。なお検討で利用したSAH hydrolaseはTrypanosoma由来で、ヒト由来酵素には適用不可能であった。そこで、構造展開を模索したが、まだ、ヒト酵素への展開可能プローブ開発には至っていない。なお、この酵素プローブの利用を念頭とし、Trypanosoma由来SAH hydrolaseの阻害剤候補物質の合成展開を行うとともに、周辺関連研究を展開した。
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