研究課題
ストレスや活性酸素種(ROS)によりDNA中に発生する酸化損傷塩基(8オキソグアノシン(8-oxodG))の量は、ガン、加齢やアルツハイマー病などの神経変性疾患との関連性が示唆され、優れたバイオマーカーとして知られている。既存の機器分析学的・免疫学的検出の技術では、8-oxodGの存在量や分布の確認をすることは可能であるが、1分子リアルタイムDNAシークエンサー技術ですらDNA中の8-oxodGの発生位置を配列選択的に特定したという報告はなされていない。そこで本研究では、申請者がこれまでに8-oxodG認識可能な人工核酸トリリン酸体を独自に合成し、酵素により8-oxodG鋳型鎖に対し伸長鎖への人工核酸の取り込みを実現している内容をさらに発展させて、認識機能の特異性を高め、世界初の損傷塩基発生位置特定法への展開を目的としている。本年度は、これまでの人工核酸であるdAdapTPの基本骨格であるアデノシン骨格の塩基認識部位にアミノ基やハロゲン基を導入した新規誘導体と購入可能なポリメラーゼ(DNA合成酵素)、さらには人工的なポリメラーゼを用いた条件検討を行った。これまでに化学合成に成功しているdAdapTP誘導体と緩衝液の条件など様々検討することにより、一塩基伸長反応において鋳型鎖中の8-oxodGとTをほぼ完全に区別できることを新たに見いだした。また、増幅法への展開を目指した研究の一環で、トリリン酸γ位修飾dNTPの効率的な化学合成に成功し、それぞれのトリリン酸体誘導体の一塩基伸長反応による速度論パラメーターの算出および全核酸が混合したときでも伸長反応が可能であることを明らかにした。
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Mutation Research - Genetic Toxicology and Environmental Mutagenesis
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