研究課題/領域番号 |
17K19496
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
川上 茂 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (20322307)
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研究分担者 |
麓 伸太郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (70380988)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | メカノトランスフェクション / メカノセンサー分子 / 組織吸引圧法 / 組織透明化 |
研究実績の概要 |
我々は、生物医学領域や遺伝子治療への応用や発展を目指し、圧力刺激を組み合わせた組織押圧法・吸引圧法を開発してきた。本研究では、組織吸引圧法における生体組織でのメカノトランスフェクション細胞の特定ならびにメカノセンシング機構について検討を行った。 メカノトランスフェクションに関して、組織吸引圧刺激をマウス心臓に適用したところ、心臓においても外来遺伝子の導入が可能であった。プラスミドをナノ粒子化して、組織吸引圧刺激をおこなったところ、遺伝子発現は低下した。ナノ粒子化により生体内ではプラスミドは安定化できるため、メカノトランスフェクションにおいては、細胞内に移行してからのプラスミドの遊離が遺伝子導入の律速段階となっていることを示唆している。一方、メカノセンシング機構の解明に関して、肝臓内におけるヘモグロビンa, b鎖mRNAの挙動変動から評価したところ、吸引回数に伴い、ヘモグロビンa鎖 mRNAの発現が増加した。さらに、5回吸引刺激により、吸引10分後からヘモグロビン鎖mRNAの発現が上昇した。このことから、肝臓への吸引刺激がヘモグロビン鎖の合成を誘導する可能性を示した。加えて、生体へ加えられた圧力刺激が活性酸素種 (ROS) を誘導し、様々な生体応答に繋がることが報告されている。そこで、ROSの発生をSeebestによる組織透明法により可視化できる評価系を構築し、生体組織における吸引刺激とROSの関連性について評価を行った。その結果、組織吸引を行っていない葉ならびに遺伝子導入条件である1回吸引した葉においては、ROSの発生は認められなかったものの、5, 10回吸引した葉においては、回数に一致したROSの増加が認められた。これらの知見は、短時間に繰り返し組織吸引圧刺激を付与した生体組織においてはROSが発生し、ROSがメカノセンサーとして働く可能性を示したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼデータは得たが、投稿するに際し、腎臓・心臓に関するメカノトランスフェクションでの詳細な遺伝子発現分布に関する追加実験が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
腎臓・心臓に関するメカノトランスフェクションでの詳細な遺伝子発現分布に関する追加実験を行い、投稿を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼデータは得たが、投稿するに際し、腎臓・心臓に関するメカノトランスフェクションでの詳細な遺伝子発現分布に関する追加実験が必要である。腎臓と心臓への動物実験手技の確立に予想より時間を要したが、手技は確立できたため、速やかに研究計画を実行し、投稿をすすめる。
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