研究課題
本応募研究計画では、新薬開発で問題となっている抗がん剤の心筋収縮抑制を評価することを将来目標としている。研究目的は、ヒトiPS細胞を利用して、心房筋と心室筋を識別できる高精度さと慢性作用の解析を可能とする非侵襲性を兼ね備えた新規の実験系を開発することである。これまで、心毒性評価と言えば、電気現象の解析に一辺倒であった。今回、初めて力学的現象という指標を入れようとしており、国際競争もある中、独自のシステムの発展を試みている。非臨床での心毒性評価において、いまだ力学的現象の評価が含まれていない理由は、実用化が可能なin vitro実験系がないことが問題であると考え、動きベクトル解析法とヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いて、心房・心室筋を識別できる新しいシステムを構築し、慢性的な心不全障害を評価することを発案した。最終年度は、初年度および次年度の研究により得られた長時間測定のための実験条件を用いて、抗がん剤による心毒性および保護薬候補の効果について検討した。抗がん剤として、ドキソルビシン・スニチニブ・エルロチニブの8日間投与の作用を検討したところ、ドキソルビシン・スニチニブは心筋収縮抑制作用を示した一方、エルロチニブでは見られなかった。ドキソルビシンの心毒性に対して予防薬となる可能性があるインスリンおよびデクスラゾキサンについて、心筋収縮抑制作用への影響を調べた。いずれも完全にブロックすることはなかったが、抑制の度合いを有意に減少させた。以上より、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を心毒性の保護(予防)薬のスクリーニングに使用できることを実験的に示すことに成功した。ヒトiPS細胞由来心筋細胞の同社異種株を解析したところ、マーカー発現のばらつきが少なくなり、識別も困難になった。以上の結果からヒトiPS細胞由来心筋細胞の細胞特性から品質を評価する指標として有用ではないかと考えている。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
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https://w3pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/rinsho/
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https://db.u-shizuoka-ken.ac.jp/show/prof687.html