研究課題
挑戦的研究(萌芽)
リーリン欠損マウス胎児脳の脂質組成を網羅的に解析した結果、非膜リン脂質中の多価不飽和脂肪酸の含有量が低下していた。しかも、多価不飽和脂肪酸不足を補うために補償的に合成される特殊脂肪酸のミード酸(C20:3, n-9)量が顕著に増加していた。すなわち、リーリンは神経細胞の多価不飽和脂肪酸量を上昇させることが強く示唆された。多価不飽和脂肪酸の上昇は脳の機能を改善し、アルツハイマー病の発症を抑えると考えられているので、リーリンの量または機能を上昇させれば、精神神経疾患の治療に役立つかもしれない。
分子神経生物学
本研究の結果は、「リーリンの機能」「脳の脂肪酸組成」「精神神経疾患の発症」の3者間に今まで漠然と存在した相関を包括的に理解できる可能性を示唆しており、概念的には大きな進歩であると考えている。また、アルツハイマー病などの難治性神経疾患に対する新たな治療法開発の糸口にもなり得るものである。