研究課題/領域番号 |
17K19501
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
鈴木 亮 帝京大学, 薬学部, 教授 (90384784)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロバブル / 超音波 / リポソーム / がん治療 / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
本研究では、マイクロバブルの表面に抗がん剤封入リポソームを搭載した複合体を新たに調製し、超音波刺激に応じてリポソームを放出するシステムを構築する。また、この新たなリポソーム・マイクロバブル複合体と超音波の併用は、超音波を照射したタイミングおよび場所で抗がん剤封入リポソームが放出されるため、膵臓がんに対して効率よく抗がん剤をデリバリーする方法として期待される。本年度は、リポソーム搭載型マイクロバブルからのリポソーム放出によるがん細胞の増殖抑制効果を検討した。マウス膵臓がん細胞 PAN02 細胞にドキソルビシン封入リポソーム搭載マイクロバブルを添加し、超音波照射の有無による細胞増殖抑制効果を評価した。その結果、超音波を照射した群において、効果的な細胞増殖抑制効果が認められた。次に、この細胞増殖抑制効果のメカニズムを解析することとした。具体的には、細胞増殖抑制効果が超音波照射によるリポソームからドキソルビシン放出によるものか、ドキソルビシンを保持した状態でリポソームがマイクロバブルから放出されたためであるかを検討した。ドキソルビシン封入リポソーム搭載マイクロバブルに超音波を照射し、リポソームからのドキソルビシン放出を確認した。その結果、リポソームからのドキソルビシン放出はほとんど認められなかった。また、細胞に作用させる前のドキソルビシン封入リポソーム搭載マイクロバブルに超音波を照射し、照射後のサンプルを細胞に作用させても細胞増殖抑制効果は認められなかった。以上の結果より、リポソーム搭載マイクロバブルへの超音波照射により、リポソームがマイクロバブルから放出され、そのリポソームが細胞に作用して細胞増殖抑制効果が得られたものであると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はリポソーム搭載型マイクロバブルの調製に成功し、本年度はそのマイクロバブルを利用して、超音波照射との併用による膵臓がん細胞の増殖抑制効果を得ることができた。このデータを基に来年度は、in vivo での膵臓がん治療効果について検討する予定であり、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、抗がん剤封入リポソーム搭載型マイクロバブルを利用した超音波リポソームデリバリーの in vitro におけるコンセプトを証明することができた。本年度得られた超音波照射条件などを利用して、in vivo での膵臓がん移植動物モデルでの抗腫瘍効果の検討を行う。また、抗がん剤の種類の最適化やがん組織内の血管内皮細胞をターゲティング可能なペプチド修飾による抗腫瘍効果増強に向けた検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、動物での検討を行う計画となっているが、本年度に膵臓がんモデル動物の作成に最適と思われる新たな種類のマウス膵臓がん細胞を入手した。本年度は、本細胞を移植したモデル動物の適性を評価することができず、次年度に検討することとした。そのため、次年度の使用額が生じた。
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