研究課題/領域番号 |
17K19503
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
諫田 泰成 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 部長 (70510387)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 脂質 / 癌幹細胞 / 創薬 / 乳癌 / 受容体 |
研究実績の概要 |
近年、既存の薬剤に対して抵抗性を示す「癌幹細胞」が存在し、 薬剤による治療後も数パーセントの癌幹細胞が残存して癌が再発・転移すること、トリプルネガ ティブ型乳癌には多くの乳癌幹細胞が含まれることが明らかになってきた。したがって、癌幹細胞を標的とした新たな治療薬の開発が期待される。 しかしながら、癌幹細胞を直接標的とする癌の根治療法は実現していない。そこで、本年度は、ホルモン受容体が陰性であるため有用な分子標的治療薬がないトリプルネガティブ型乳癌細胞株に焦点を当てて、ヒト乳癌細胞株から調製した癌幹細胞を用いて、癌幹細胞に選択的に発現している脂質のスクリーニングを行った。癌幹細胞は、MDA-MB-231細胞株から機能的なマーカーであるアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の陽性細胞をフローサイトメーターにより癌幹細胞画分を調整して、本実験に使用した。脂質の網羅的な解析は、共同研究先のLC/MSシステムを利用した。その結果、ALDH陽性細胞において選択的に発現している脂質として、リゾリン脂質の1種であるリゾホスファチジン酸(LPA)や新たな脂質分子を見出した。今後、これらの分子を介するシグナル伝達機構、癌幹細胞の増殖に対する作用について引き続き検討を行い、癌幹細胞の機能に重要な分子をさらに絞り込む予定である。また、乳癌のサブタイプとの関連や臨床検体、担癌マウスなどの解析も行う。さらに、脂質合成酵素などに対する阻害剤を設計して、創薬基盤の構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想通り、癌幹細胞に選択的に発現している脂質を見出すことができた。しかしながら、乳癌サブタイプとの関連は不明であり、また臨床検体などを用いて癌幹細胞における解析も必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今回明らかにした脂質の情報をもとに、脂質を介するシグナル伝達機構、乳癌サブタイプ、増殖などの機能を解析する予定である。また、臨床に向けては、細胞株だけではなく臨床検体を用いて検討を行う。これにより、癌幹細胞を標的とする創薬基盤が構築できると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に臨床検体などの購入に予算を使用したが、臨床検体の購入に時間がかかったことに加えて、研究所における事務処理に時間がかかり、次年度に繰り越されることとなったため。
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