乳癌はホルモン受容体やHER2の発現により分類されるが、ホルモン受容体やHER2などのないトリプルネガティブタイプは標的分子がないため、有効な分子治療薬が存在していない。近年、「癌幹細胞」と呼ばれる幹細胞の性質を有する細胞を起源として、癌細胞が形成されることが明らかとなってきた。そこで、我々は乳癌幹細胞を用いて脂質の網羅的な解析を行った結果、LPAなどの脂質がトリプルネガティブタイプ由来の乳癌幹細胞に高発現していることを見出した。実際、LPA刺激によりインターロイキン8の産生を介して乳癌幹細胞の増殖が誘導された。以上の成果により、癌幹細胞の脂質シグナルを標的とした新たな治療戦略が期待される。
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