研究課題/領域番号 |
17K19512
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
和田 洋一郎 東京大学, アイソトープ総合センター, 教授 (10322033)
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研究分担者 |
和田 裕美 東京大学, アイソトープ総合センター, 特任研究員 (60645042)
中戸 隆一郎 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (60583044)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | くも膜下出血 / エピゲノム解析 / 血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
研究チームは内皮細胞分化を含むくも膜細胞の多能性分化能に関する研究と、内皮細胞を用いたエピゲノム解析やクロマチン相互作用解析による転写制御とクロマチン構造の関係について研究を行っている。報告中である。本研究では、以下の三項目を研究の主眼としている。 (1)臨床検体由来のくも膜細胞におけるSMAD3を中心とする転写因子カスケードの評価。内皮細胞、血球細胞、神経細胞との比較によって標準くも膜細胞において特徴的な一群のエンハンサー部位が同定され、モチーフ解析によって特定の転写因子が抽出された。一方、トランスクリプトーム解析でも同じ転写因子の高発現が示されている。そこで、SAH由来のくも膜細胞からRNA-seqによるトランスクリプトーム情報とヒストン修飾情報を取得し、これら転写因子の働きを評価すること。 (2)くも膜細胞から内皮細胞への分化における転写因子カスケードの評価。初代培養細胞による内皮細胞誘導系を用いて、単一細胞レベルで、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行い、抽出した転写因子カスケードが確かに変動することを検証すること。 (3)重要な転写因子を介したクロマチン構造解析。重要な転写因子については、ChIP-Seq解析を行い、ゲノム上の結合部位を網羅的に同定する。次に、この部位にプライマーを設計してcapture Hi-Cを行い、内皮細胞への分化に伴うクロマチン構造変化を明らかにする。重要な相互作用部位においては、engineered DNA-binding molecule-mediated chromatin (enChIP)によって、結合する蛋白複合体解析を行い、分化を司る転写複合体を同定すること。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床検体由来のくも膜細胞におけるSMAD3を中心とする転写因子カスケードの評価については、現在までに臨床機関において倫理委員会での承認をえて、脳外科手術において不要となった組織から収集された正常くも膜と、くも膜下出血手術例、及びモヤモヤ病において収集されたくも膜をつかった初代培養を開始している。初年度中には各5例の細胞を回収と、ゲノムエピゲノム解析を実施した。次年度は更に症例数をふやすことにより、各群間での比較を行うたmの準備が完了している。 くも膜細胞から内皮細胞への分化における転写因子カスケードの評価については、初年度において、RNA-seqによるトランスクリプトームデータとH3K27ac、H3K4me3に対する抗体を用いたChIP-Seqデータをもちいたモチーフ解析によって、TGFβ経路におけるシグナル伝達系の関与を示すデータを取得した。また、転写因子については、ChIP-Seqを行い、結合部位近傍の遺伝子群がくも膜から内皮細胞への分化誘導において変動する遺伝子と合致することが確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
上記ように、TGFβ経路に関する転写因子のChIP-Seqによってその関与を示唆するデータを得たので、次年度はその結合部にプライマーを設計してcapture Hi-Cを行い、内皮細胞への分化に伴うクロマチン構造変化(目的の3番目)を明らかにする予定である。重要な相互作用部位においてはenChIPを実施して蛋白複合体解析を行い、分化を司る転写複合体を同定する予定である。
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