臨床検体由来のくも膜細胞におけるSMAD3を中心とする転写因子カスケードの評価については、現在までに臨床機関において倫理委員会での承認をえて、脳外科手術において不要となった組織から収集された正常くも膜と、くも膜下出血手術例、及びモヤモヤ病において収集されたくも膜をつかった初代培養を行った。初年度中には各5例の細胞を回収と、ゲノムエピゲノム解析を実施した。第二年度は更に各5例の細胞を回収し、現在比較検討を行っている。 くも膜細胞から内皮細胞への分化における転写因子カスケードの評価については、初年度において、RNA-seqによるトランスクリプトームデータとH3K27ac、H3K4me3に対する抗体を用いたChIP-Seqデータをもちいたモチーフ解析によって、TGFβ経路におけるシグナル伝達系の関与を示すデータを取得した。第二年度において、特に重要な転写因子についてはChIP-Seqを行い、結合部位近傍の遺伝子群がくも膜から内皮細胞への分化誘導において変動する遺伝子と合致することを確認した。 さらに網羅的なクロマチン相互作用解析を行い、くも膜細胞から内皮細胞への分化の背景にあるクロマチン構造変化とその基本原理の解析を進めた。 以上の内容について現在論文投稿作業を行っている。
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