研究課題
細胞競合と呼ばれる現象は、異常細胞を排除することで組織恒常性を維持し、上皮組織の発癌抑制に関わることが示唆されている。しかしながら、哺乳類の表皮を構成する表皮基底細胞において、どのような遺伝子が関わり、細胞競合が起こっているのか、殆ど分かっていない。申請者らは、これまでに毛包幹細胞の17型コラーゲンが、ゲノム損傷ストレスに応じて、加齢とともに分解を受けることで、毛包がミニチュア化し、永久脱毛につながる仕組みを明らかにしてきた(Matsumura et al., Science 2016)。この研究の結果、ゲノム損傷ストレスにより癌遺伝子変異を獲得した角化細胞が、細胞競合機構を介して排出されることで癌の発生を抑制している可能性があるという考えに至った。そこで、本研究では、表皮角化細胞において、細胞競合機構を介して、癌変異獲得角化細胞が、正常角化細胞を取り囲まれたのち、排除されるのか検証する。癌細胞変異を加えた細胞の運命を追跡できる成体マウスで表皮基底細胞の運命を解析できるマウス実験系を用いて、癌変異を獲得した後、細胞競合が起こるのか検証し、その仕組みを解明する。これにより、正常角化細胞での細胞競合の基本原理解明や発癌抑制の機構解明に繋げることを目的とした。昨年度では、遺伝子改変マウスを駆使して、表皮基底細胞におけるin vivoマウス細胞競合の解析システムの実験系の構築に成功しており、本年度では、細胞増殖促進するKRAS変異獲得細胞と野生型細胞とで実際に細胞競合が起こるのか、検証を行っている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
Nature
巻: 658 ページ: 344-350
10.1038/s41586-019-1085-7.
Communications Biology
巻: 2 ページ: 37
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