研究課題/領域番号 |
17K19517
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
岡田 泰伸 生理学研究所, 名誉教授 (10025661)
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研究分担者 |
岡田 俊昭 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 特任准教授 (00373283)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 生理学 / アニオンチャネル / ATP放出 |
研究実績の概要 |
巨大単一チャネルコンダクタンスを示すマキシアニオンチャネルMaxi-Clは、脳や心臓など種々の組織で、特に梗塞などの病態下で、重要な役割を果たす細胞外パラクリン・シグナルとして働くATPやグルタミン酸を細胞から高効率に放出する通路を与える。私達は最近、Maxi-Cl活性高発現C127細胞ブレッブの膜タンパク質のプロテオミクス解析データと、C127細胞とMaxi-Cl活性欠失C1300細胞の間で行ったゲノムワイドマイクロアレイ差解析で得た遺伝子データから、Maxi-Clポア構成コアサブユニットMAC-1としてSLCO2A1を同定することに成功した。しかし、脂質膜再構成系と強制発現細胞系におけるMAC-1チャネル機能には、それぞれ活性化制御メカニズムと電圧依存性不活性化メカニズムが欠損していた。そこで、平成29年度研究では、刺激に応じた活性化の制御サブユニットの同定を目指した。Maxi-Clはアクチン重合阻害剤latrunculin B処理によって得たブレッブの膜上では、Maxi-Clは刺激なしに恒常的に活性化されていることを私達は確認している。この事実は、Maxi-Clの活性化に細胞膜直下のアクチン網構造の破壊が活性化に関与していることを示している。それゆえ、プロテオミクス解析で得たブレッブ膜タンパク質群において、Exponentially Modified Protein Abundance Index (emPA1)のランキング上位のもので、アクチン関連タンパク質と想定される分子を選定し、それらをsiRNAスクリーニングにかけて、Maxi-Clの活性化を促進するものとしてアネキシンA2(Anxa2)を特定し、そのmiRNAノックダウンによるMaxi-Cl活性抑制効果を確認し、更に免疫共沈殿法によってSLCO2A1とのタンパク質-タンパク質相互作用を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究目的であるMaxi-Clの活性化制御分子の一つとしてAnxa2を世界に先駆けて同定した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、まず、Anxa2と協力してMaxi-Cl活性化制御にかかわる因子を特定するために、Anxa2とタンパク質-タンパク質相互作用ネットワークを形成するタンパク質で、しかもMaxi-Cl活性の豊富なC127細胞に発現しているが、Maxi-Cl活性の乏しいC1300細胞には発現していないものを検索し、そのノックダウンによるC127細胞Maxi-Cl活性の抑制をもたらすタンパク質を、第二の制御因子として同定する。次に、Maxi-Clは、陽電圧下においても負電圧下においても、活性化後に直ちに閉じて(不活性化して)いき、電圧が高いほどその不活性化スピードは速くなるという特徴的な電圧依存的不活性化キネティクスを示すが、その電圧依存的不活性化因子を探索する。Maxi-Cl活性を内在性に欠失したHEK293細胞にMAC-1を強制発現させるとMaxi-Cl活性を示すようにはなるが、この活性には電圧依存的不活性化キネティクスが見られないので、この電圧依存的不活性化因子はHEK293細胞には欠落している。一方、C127細胞およびそのブレッブ膜は電圧依存的な不活性化キネティクスを示すので、この不活性化因子を持っている。更に、その因子は細胞膜を挟んでの陽・負両電位差に対して感受性を示す膜電位センサーであり、膜貫通型タンパク質であると考えられる。そこで、ブレッブ膜タンパク質群中の膜貫通型タンパク質のうちで、HEK293細胞に含まれないものをその不活性化因子の候補として選定する。更には、FlagタグをつけたMAC-1に結合するC127細胞由来の膜貫通型タンパク質を質量分析法によって選定し、これらも不活性化因子の候補とする。これらの候補タンパク質に対するsiRNAスクリーニングを行い、電圧依存的不活性化に対して抑制効果を示すものからこの不活性化因子の最終候補を選定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、実験に集中するために計画していた外国出張を取りやめたことにより、計上していたその旅費を使わなかったことと、雇用していた外国人研究員が私的理由で一時帰国したためにその雇用費を一部しか使わなかったことによる。 これまで別の資金で雇用していた研究補助員の人件費が平成29年度で切れたが、平成30年度の本研究においても研究補助員を雇用しなければならず、その資金として使用する。
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