研究課題
本研究の目的は、近縁種に異なる繁殖生態を持つ魚類を対象に、「交尾」や「精子競争」に伴って進化した精子や精漿の分子基盤を解明することである。令和元年度は、(1)アサヒアナハゼの全ゲノム配列の解析、(2)カジカ科魚類精巣のRNAシーケンス、そして(3)近縁種間で交尾種と非交尾種が見られる10魚種の精子特性の比較解析を行った。(1)昨年度は、次世代シーケンサーを用いて、交尾・卵寄託型のアサヒアナハゼの全ゲノム配列を決定した。今年度は、得られた配列データの解析とアラインメントを行なった。品質の良い配列データが得られ、アサヒアナハゼのゲノム塩基配列は約600 Mbpであることが明らかになった。(2)昨年度、野外採集で得られたカジカ科魚類10種(非交尾・雄保護型2種、交尾・雄保護型3種、交尾・雌保護型2種、交尾・卵寄託型3種)について、精巣のRNAシーケンスを行った。これらの配列を用いて、アサヒアナハゼのゲノム配列へのマッピングを行ったが、alignment rateが低い種が多く、現在、De Novo解析を行なっている。これらの解析によりゲノムのデータベース作成が完了すれば、これまでの質量分析結果の精漿タンパク質や精子のタンパク質の同定が可能となるはずである。(3)昨年度までに得られたスズキ目近縁2科4種、トゲウオ目近縁2科3種、カサゴ亜目近縁2科3種の精子特性を比較した結果、魚類の精子は交尾の進化に伴い、頭部が細長くなり、体内環境での運動性を獲得するとともに体外での運動性を消失したことが分かった。これらの結果は新規のものであり、現在投稿論文として準備中である。一連の成果は国内のシンポジウム等で招待講演を行った。また、魚類精子の最適な固定方法、カジカ科魚類の特異な繁殖生態を学術論文で発表した。淡水産カジカ科魚類の交尾に関わる精子の進化については論文を現在投稿中である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 4件) 備考 (4件)
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