研究課題
(1)α6サブユニットがプロセシングされたプロテアソームの特性と局在:プロテアソームのα6サブユニットのC末端16残基のプロセシング後に出現する精子特異的C末端15残基のペプチド(Csp15)に対する抗体を作製し、ペプチドカラムを用いて精製した。精子抽出液のSDS-PAGE後に、Csp15抗体を用いて、ウエスタンブロット解析を行った。その結果、32 kDaに単一のバンドを与えた。この結果は、本抗体が特異的であることを示すとともに、精子中のプロテアソームは殆どC末端がプロセシングされていることを示唆している。次いで、免疫染色を検討した。マボヤ精子をTriton X-100で透過処理を行った場合と透過処理しない場合とで比較した結果、いずれも精子頭部が強く染色された。このことは、精子頭部の細胞膜表面にプロテアソームが存在することを示唆している。しかし、全ての精子が染色される訳ではないので、今後さらに詳細な解析が必要である。(2)Csp15抗体で免疫沈降されるタンパク質の解析:Csp15抗体を用いた免疫沈降実験を行った。コントロール抗体では免疫沈降されないバンドを切り出して、質量分析を試みた。その結果、32 kDaのバンドは、プロテアソームα6サブユニットであることが判明したが、共沈降されてくるバンドの検出には至らなかった。今後、細胞質画分と細胞膜画分に分けて、Csp15抗体を用いて各種条件で免疫沈降する必要がある。(3)精子PA200のcDNAクローニングと遺伝子破壊実験:マボヤゲノム上にPA200の遺伝子が検出されるので、その配列情報を元に、cDNAクローニングを現在行っている。cDNA配列が確定すれば、その抗体を作製し、局在性解析と免疫沈降を行う。市販のPA200抗体も検討したが、交叉反応性は確認されなかった。
2: おおむね順調に進展している
(1)α6サブユニットがプロセシングされたプロテアソームを認識する抗体Csp15について:プロテアソームのα6サブユニットのC末端16残基のプロセシング後に出現する精子特異的C末端15残基のペプチド(Csp15)に対する抗体は、当初考えていた以上に特異的にα6サブユニットに反応することがわかった。また、免疫染色においても、精子を透過処理しなくても頭部で反応するという予備的結果は興味深い。全ての精子が染色される訳ではないので、今後さらに詳細な解析が必要ではあるが、実験はほぼ順調といえる。(2)Csp15抗体で免疫沈降されるタンパク質の解析:Csp15抗体はα6サブユニットを沈降させるが、共沈降する成分を同定することはできていない。その意味では多少実験の遅れがあるが、反応特異性は高いことが判明したことは予想以上に満足すべき結果であり、おおむね順調と判断した。(3)精子PA200のcDNAクローニングと遺伝子破壊実験:マボヤPA200のcDNAクローニングに関しては、当初の予定より遅れている。しかし、cDNA配列が完了すれば、その抗体を作製し、平成30年度中に局在性解析と免疫沈降が完了すると思われる。現在、PA28とPA200の遺伝子をゲノム編集により破壊する実験も同時進行しており、これは計画通り進んでいる。
(1)α6サブユニットがプロセシングされたプロテアソームを認識する抗体Csp15について:Csp15抗体を用いて、免疫染色に関する詳細な解析を行う。予備実験では精子頭部表面での局在が示唆されているが、全ての精子が染色される訳ではない理由については不明であり、その検討を行う。精子が非自己卵の卵黄膜に接着後に活性化され、それによって細胞膜表面にプロテアソームが露出するのか否かも検討する。(2)Csp15抗体で免疫沈降されるタンパク質の解析:Csp15抗体はα6サブユニットを沈降させるが、共沈降する成分を同定することはできていない。プロテアソームのα6以外のサブユニットも免疫沈降されにくいので、現在検討している免疫沈降条件によりタンパク質間相互作用が弱まっている可能性もあり、その条件検討を行う。(3)精子PA200のcDNAクローニングと遺伝子破壊実験:マボヤPA200のcDNAクローニングに関しては、多少難航しているが、できるだけ早期にcDNAクローニングを完了させ、抗体を作製する。そして、局在性解析と免疫沈降による相互作用タンパク質の解析を行う。PA28とPA200の遺伝子をゲノム編集により破壊する実験に関しても、遺伝子組換えホヤの飼育条件を検討しながら、絶やさないように注意して系統維持し、受精実験を行う。
PA200のcDNAクローニングに、予定していた以上に時間を要したため、その抗体作製費用として計上していた予算が次年度まわしとなったのが主な理由である。また、マボヤ精子の大量調製が予定していたように順調に進まず、精子タンパク質の大量精製などの生化学的実験が次年度まわしとなったことも要因である。マボヤは主に女川湾で養殖されており、かつてはそれを大量に購入していたが、東日本大震災の際に養殖場は壊滅的被害にあい、養殖を再開して成体に育てて出荷するのに3年を要した。その後、女川湾では被嚢軟化症というマボヤの感染症が蔓延し、東北大学の実験施設のある青森市浅虫に女川湾のマボヤを移すことが青森漁協によって禁止される事態となった。その後、青森漁協で独自に種苗してマボヤを成体にまで育てるのにさらに3年かかり、平成30年1月が初めての大量調製実験となった。しかし、女川湾産のマボヤとは産卵誘発条件が異なっており、従来のように大量に精子を得ることは出来なかった。これは産卵誘導する際の海水温や光条件の違いによると思われるが、来年はそれも検討する予定である。今年の冬は暖冬だったことも一因かもしれないが、自然環境に左右される実験でもあり、平成30年度は是非とも当初の計画を完了させたい。
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Reproductive and Developmental Strategies: Diversity and Commonality in Animal (Springer Japan)
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