研究課題
ユビキチン-プロテアソーム系(UPS)は主要な細胞内タンパク質分解経路であるが、細胞外での機能はほとんど知られていない。今まで、マボヤ精子プロテアソームが精子の卵黄膜通過時にライシンとして細胞外で機能すること、また、精子プロテアソームでは、α6サブユニット特異的にC末端16残基がプロセシングされることを報告してきた。そこで、このα6のプロセシング後に露出するC末端配列に特異的なペプチド抗体を作製して、検討を行った。本抗体は特異性が高く、精子全タンパク質を用いたウエスタンブロット解析でも単一バンドを与えた。細胞膜透過処理しない条件で免疫染色を行ったところ、精子頭部とミトコンドリアの表面が染色されるという予備的知見は得られたが、今後詳細な条件検討を行う予定である。本抗体を用いて精子抽出液の免疫沈降実験を行ったところ、コントロール抗体では沈降されない複数のバンドを検出した。今後、この成分を質量分析で同定する予定である。一方、プロテアソームアクティベーターPA200は精巣で強く発現し、その遺伝子破壊により雄性不稔になることが報告されているが、受精への関与は不明である。そこで今回、PA200に対する抗体を作製し、受精阻害効果を検討したが、今回作製した2種類の抗体は受精阻害活性を示さなかった。一方、ゲノム編集により、PA200遺伝子を破壊したカタユウレイボヤの作出を試みたが、発生異常が起こり、F1個体の作出には至らなかった。今後、TALEN plasmidを生殖巣特異的に発現させる条件を検討して、その機能解析を行うことが課題である。
3: やや遅れている
PA200の機能解析を行うには、抗体を用いた受精阻害実験や、ゲノム編集による遺伝子破壊が一般的手法である。抗体に関しては、今回作製した抗体は中和活性を示さなかった。ゲノム編集実験においては、変態段階で、発生異常になる可能性が示された。そのような効果がなければ、F1個体の作出も可能であったが、予期できない問題点でもある。現在のところ、生殖巣特異的にTALEN plasmidを発現させる方法は確立していないが、今後の検討課題である。
細胞膜透過処理する場合としない場合で、抗α6抗体を用いて免疫染色を行い、再現性のよい結果が得られる条件を確立する。また、この抗α6抗体を用いて、免疫沈降実験をおこない、相互作用タンパク質を同定する。さらに、抗PA200抗体を用いて免疫沈降をおこない、相互作用解析をする一方で、細胞膜透過処理する場合としない場合での免疫染色も行う予定である。PA200のゲノム編集実験に関しては、精巣特異的に発現できるTALEN plasmidの開発を試みる。
実験計画に従い、PA200遺伝子の破壊実験を行なったが、胚が発生異常をおこし、成体からの精子採集が困難なことから研究計画の見直しが必要となった。そこで、精巣特異的にTALENを発現させ、精巣でのPA200発現を抑制する実験を開始している。これは未開領域でまだ成功例が報告されていないが、その条件を検討し是非とも完成させたい。また、抗α6抗体や抗PA200抗体の作製には成功したが、それらを用いた局在性解析や免疫沈降による相互作用タンパク質の解析は遅れており、それらも完了させたい。
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