研究課題/領域番号 |
17K19529
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
末次 志郎 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (70345031)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | 脂質膜結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
2017年度の研究では、ANKHD1のアンキリンリピートドメインによる切断機序を解析した。立体構造予測によれば、多数のアンキリンリピートはらせん状の立体構造を形成する。ANKHD1の場合は、前半の15リピートおよび後半の10リピートに分けられる。タンパク質立体構造予測から、タンパク質表面の脂質膜と相互作用すると考えられるアミノ酸残基を推定し、これらに変異を導入したタンパク質断片、及び、野生型のタンパク質断片を大腸菌により発現精製し、試験管内での脂質膜との相互作用を調べた。脂質膜としては、PCとPEあるいはPCとPSを用いて再構成した人工膜、あるいは、粗精製脂質画分であるFolch脂質を用いて再構成した人工膜を用いた。超遠心により、比較的分子量の大きなリポソーム(人工膜)を沈殿させ、大きなリポソームの沈降に伴いタンパク質が沈殿するかどうか調べることで、タンパク質と脂質膜の結合を調べた。ここで、リポソームが沈殿しなければ、脂質膜は小胞化したと考えられる。その結果、脂質膜を断片化するANKHD1のフラグメント及び、断片化に影響を与えるアミノ酸残基を同定した。超遠心による方法に加えて、さらに、ANKHD1による脂質膜の切断活性を電子顕微鏡解析により確認した。 次に、細胞内でのANKHD1の機能を明らかにするために、脂質膜の切断をおこなうANKHD1のタンパク質断片を発現させた細胞と、ANKHD1の発現をRNAiにより減弱させた細胞を用意した。これらの細胞の細胞内小器官の形成、消失を、オルガネラマーカータンパク質の抗体染色により調べ、ついでWestern blottingによりタンパク質量の増減を調べることで、オルガネラの増加や減少を調べた。その結果、ある特定のオルガネラの減少が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の通りに研究が進んでいるため。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度の研究では、脂質膜と相互作用するアミノ酸残基をアミノ酸の点変異により同定し、試験管内での再構成実験により、脂質膜との相互作用および切断機序を同定する。また、これらのオルガネラの制御は、PI(4)Pなどのフォスフォイノシタイドの制御下にあることが多いので、PI(4)Pなどを添加した人工膜を作成し、その効果も調べる。 ゴルジ体は、小胞体(ER)やエンドソーム、細胞膜へ小胞を放出し、またこれらのオルガネラから小胞を受け取っている。したがって、これらのオルガネラにおけるANKHD1の局在を調べるとともに、ANKHD1の過剰発現やRNAiによるノックダウンで、これらのオルガネラの形態がどのように変化するか調べる。 さらに、ANKHD1の全長での脂質膜切断活性を明らかにする。大腸菌を用いた発現系を用いて全長タンパク質の発現精製を試みる。ANKHD1は、大きなタンパク質で発現が難しいことも予想されるため、293細胞を用いたタンパク質の発現も試みる。得られた全長タンパク質を用いて、PCとPEあるいはPCとPSに加えて様々なフォスフォイノシタイドを添加した再構成リポソームをもちい、脂質膜との結合と切断を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
細胞染色に用いる抗体や培地などに用いる。
|