研究課題/領域番号 |
17K19529
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
末次 志郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70345031)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞生物学 |
研究実績の概要 |
アンキリンリピートドメインは、33アミノ酸のユニットが繋がって、バナナのような湾曲した構造をとることが多い。ANKHD1は全体で25リピートを持つことから、アンキリンリピートドメインの部分のみで1500アミノ酸を超える大きなタンパク質である。他の膜変形ドメインとしてよく解析されているBARドメインタンパク質は、250-300アミノ酸であることを考えると、1分子で、BARドメイン数分子に相当する大きさとなる。立体構造予測をもとに、脂質膜と相互作用するアミノ酸残基をアミノ酸の点変異により同定し、試験管内での再構成実験により、脂質膜との相互作用および切断機序を同定した。具体的には、立体構造予測において、バナナ状の大きな足場部分とその近傍の両親媒性ヘリックス部分の両方が脂質膜との相互作用に重要であることがわかった。 ゴルジ体は、小胞体(ER)やエンドソーム、細胞膜へ小胞を放出し、またこれらのオルガネラから小胞を受け取っている。したがって、これらのオルガネラにおけるANKHD1の局在を調べるとともに、ANKHD1の過剰発現やRNAiによるノックダウンで、これらのオルガネラの形態がどのように変化するか調べた。その結果、エンドソームの形態に異常がみられた。 さらに、ANKHD1の全長での脂質膜切断活性を明らかにする。大腸菌を用いた発現系を用いて全長タンパク質の発現精製を試みたところ、全長から立体構造を取らないと思われるIDP領域を除いた部分の精製に成功した。PCとPEあるいはPCとPSに加えて様々なフォスフォイノシタイドを添加した再構成リポソームをもちい、脂質膜との結合と切断を調べたところ、脂質膜を切断する活性を遠心分析により見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね研究計画どおりに進捗し、ANKHD1の脂質膜切断機序および機能するオルガネラを同定しつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
ゴルジ体は、小胞体(ER)やエンドソーム、細胞膜へ小胞を放出し、またこれらのオルガネラから小胞を受け取っている。したがって、これらのオルガネラにおけるANKHD1の局在を調べるとともに、ANKHD1の過剰発現やRNAiによるノックダウンで、これらのオルガネラの形態がどのように変化するか、様々なマーカータンパク質に対する抗体を用いるなどして調べる。また、脂質膜の切断をおこなうANKHD1のタンパク質断片を発現させ、局在する細胞内小器官の形成、消失を、オルガネラマーカータンパク質の抗体染色により調べ、ついでWestern blottingによりタンパク質量の増減を調べることで、オルガネラの増加や減少を調べる。予備的な実験結果から、エンドソームにおける機能を見出しているため、特にエンドソームマーカータンパク質であるRab5やEEA1などとの共局在を調べる。また昨年度精製に成功したANKHD1の様々なタンパク質断片を用いて、脂質膜の切断機序を詳しく解析し、また、電子顕微鏡を用いて、脂質膜の切断を確かめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体の使用が想定より少なかったが、次年度には局在解析を予定するため、研究期間全体においては過不足なく支出する予定である。
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