研究実績の概要 |
造血幹・前駆細胞は、その周囲を取り囲む「ニッチ」により外的制御を受けている。これまで造血幹・前駆細胞は、胎仔肝臓・脾臓で増殖した後、出生前の胎齢19.5日目より骨髄へ移動・定着し、成体の骨髄造血を開始すると考えられてきたが、申請者らは免疫組織学的観察により、胎仔において骨髄造血開始前に造血幹・前駆細胞が筋組織に集積することを発見し、報告した(Tanaka, Sugiyama et al., PLoS One 2015)。さらに、筋組織造血幹・前駆細胞はコロニー形成能および骨髄再構築能を有するのみならず、ある特定の細胞の性質を示す結果を得ている(未発表データ)。申請者が知りうる限りこの様な報告は無く、胎生期筋組織はこの細胞の新しいニッチと考えられる。 平成29年度は筋組織造血細胞における本細胞・前駆細胞制御因子の探索を実施した。既に胎仔筋組織造血細胞を用いて網羅的な遺伝子発現解析を行っており、そのデータのin silico解析により、胎仔筋組織造血細胞で高発現する細胞表面受容体を上位10種類選出した。さらにWeb上で利用可能なデータベース(GeneMANIA, http://www.genemania.org、STRING, http://www.string-db.org )を利用して、選出した候補受容体と相互作用する因子(リガンド)を検索した。
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