減数分裂は生殖細胞でしかおきない特別な細胞分裂様式である。しかしながらES細胞でMAX遺伝子をノックアウトすると本来生殖細胞ではないES細胞において顕著な減数分裂開始に関わる遺伝子の発現が上昇し、実際にシナプトナマル複合体SYCP3の免疫染色では減数分裂前期様の細胞が出現する。実際にMAXが減数分裂抑制に働いているかどうか調べたところ、胎児期の始原生殖細胞でMAX遺伝子をノックアウトしたところ、やはりES細胞と同様に減数分裂遺伝子の上昇が性に関わらず認められた。しかしながら、性分化後のオスの胎児期の生殖細胞においてはMAXノックアウトに伴う減数分裂遺伝子の上昇は認められなかった。つまりMAXは性分化前の始原生殖細胞で減数分裂関連遺伝子を抑制していることが明らかとなった。一方でTg-CreERT2により全身でMAXをノックアウトしたマウスでは、頭部脳組織等においてMAXノックアウトに伴い一部の減数分裂関連遺伝子の上昇が認められた。また癌精巣抗原であるTaf7lなども上昇していることから、MAXは体細胞においても一部の減数分裂遺伝子や癌精巣抗原の抑制に関わっていることがわかった。しかしながら、SYCP3の免疫染色で確認したところ減数分裂状態になる細胞は存在しなかった。また減数分裂関連遺伝子の発現上昇は生殖細胞と比較すると大きな変化ではなかった。胎児期から組織を取り出し培養環境でMaxをノックアウトして6日培養したところ、MAXのタンパク質は消失しているもののSYCP3のシグナルは認められなかったことから体細胞においてはMAXがノックアウトされたとしても実際の減数分裂は誘導されないことがわかった。
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