研究実績の概要 |
原因不明の発生異常症例から得た生体試料(胎盤、臍帯血、臍帯、末梢血等)から抽出したゲノムDNA を用い、DNA メチル化状態のスクリーニングを行った。スクリーニングには、DNA メチル化アレイ(バイサルファイト処理によって生じる非メチル化シトシンの多型を、SNPアレイを用いて網羅的に検出する手法)を用いた。生殖・発生の重篤な異常を呈する症例(次世代を生み育てることが困難な集団)では、仮にエピゲノムあるいはゲノムの病因変異が存在すれば、大部分はランダムに起こったde novo 変異であると推測される。また、ゲノムと同様にエピゲノムにも多様性が存在するため、通常の解析では膨大な数の病的意義不明エピゲノム変異候補が見つかり、解析に苦慮する。実際に我々は、生殖補助医療(胚操作を含む治療行為)を受けた24症例と、自然流産12例の絨毛組織のDNA メチル化状態を評価した。症例数が少ないこともあるが、これらの群間比較では、明らかな有意差を呈する領域(生殖補助医療後の流産絨毛で特異的にDNAメチル化変化が起こる領域)は同定できなかった。そこで、我々が以前報告した手法(Kawai T, SciRep 2015)を用いてDNAメチル化外れ値検定を行い、その多寡を比較すると、生殖補助医療後の流産群で外れ値が多かった(すなわち、DNAメチル化状態が乱れていると考えらえた)。現在、外れ値を呈したプローブ周辺の遺伝子機能について、その詳細解析を継続中である。
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