地球の重力は我々地上の生物にとって避けられない刺激であり、進化的にも保存された何らかの免疫学的な応答機構が存在する可能性が高い。これを解明することは、重力という環境要因が我々の健康へどのように関連するのかを研究すること、また、将来的に宇宙開発を進める点でも重要な意義をもつ。我々は、重力刺激が局所神経の活性化を誘導し、特定血管に変容をもたらすことで末梢血中の免疫細胞の中枢への侵入口を形成する「ゲートウェイ反射」を明らかにした。本研究では、重力と炎症性疾患との関係を宇宙実験および地上実験との組み合わせで明らかにし、宇宙免疫学の研究領域を切り開くことを目的としている。これまでに、国際宇宙ステーション内での微小重力下での実験を可能にするため、JAXAと共同でフィージビリティスタディを行ってきた。通常、病原性T細胞は中枢神経系抗原を免疫したマウスから実験を行うたびに調製を行うが、ロケットの打ち上げは度々スケジュール変更が行われるため、病原性T細胞のクローン樹立を行い、スケジュール変更に対応可能にした。宇宙に打ち上げられたマウスは海に着水後、解析までに時間を要し、その間は1Gに晒される。そこで、地上にてマウスの尾部懸垂モデルを用いて、このタイムラグが生じてもゲートの位置が持続するかを検討したところ、長寿命のMHCクラスII高発現モノサイトを指標とすることで、ゲート位置の痕跡が検出でき、少なくとも数日間のタイムラグは解析に影響しないことが分かった。 さらに、打ち上げや帰還時などの過重力や衝撃によってもゲート位置には大きな影響が無いことが分かり、フィージビリティスタディは順調に完了した。 最終年度内に打ち上げの予定だったが、NASA側の事情で延期となり、2019年中の実施が予定されている。
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