研究課題
Arc発現レベルを上昇させる2種類の原虫遺伝子の機能を解析するため、当該原虫遺伝子cDNAを哺乳動物細胞発現用ベクターにクローニングしたものを293T細胞に発現させ、各種シグナル伝達経路の活性化を網羅的に解析した。その結果、これら2種類の遺伝子はNFκBのプロモーター活性を有意に上昇させた。次に、当該遺伝子欠損株原虫を作出し、原虫感染細胞におけるNFκBプロモーター活性を評価した。その結果、親株感染細胞と比較して、欠損株原虫2種ではプロモーター活性の低下がみられた。次に、当該遺伝子による生理的なNFκB経路への関与を明らかにするために、NFκB活性化に不可欠なNFκB複合体のうち、RelAの核内移行の度合いを解析した。その結果、これら原虫因子はRelAの核内移行を誘導することが確認された。質量分析により原虫因子に結合する宿主タンパク質の探索を行なったが、特異的な結合を示す分子は検出されなかった。トキソプラズマ感染によるNFκB活性化にはToll-like receptor2(TLR2)が重要であるため、野生型(WT)およびTLR2欠損(KO)マウスに非感染群、トキソプラズマ感染群を設定し、感染30日後にマウスの行動測定、脳組織の病理組織学的検索、原虫量、炎症性サイトカイン類の遺伝子発現量を比較した。行動実験の結果、TLR2の欠損による恐怖記憶の亢進、感染による恐怖記憶の障害が示された。しかしながら、両要因で統計学的な相互作用は認められなかった。病理学的な解析の結果、慢性期における脳組織の病変はWTとKO間で同程度に観察されたが、脳内原虫量はKOマウスで有意に増加していた。また、炎症性サイトカイン類の発現量に有意差は認められなかった。しかしながら、全般的に感染KOマウス群の炎症性サイトカインレベルが高い傾向にあり、より慢性期には慢性的な神経炎症を誘発しTLR2依存的なNFκB活性化により恐怖記憶を阻害することが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
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