研究課題/領域番号 |
17K19539
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高井 俊行 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (20187917)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 免疫記憶 / 免疫寛容・自己免疫 / 免疫シグナル伝達 / 炎症 / 免疫制御・移植免疫 |
研究実績の概要 |
プラズマセル(PC)を維持する骨髄中のニッチとして間葉系幹細胞(MSC)に着目して研究を進め,平成30年度までにマウス骨髄細胞からフローサイトメトリー(FCM)により精製したMSCとPCとの共培養系を確立し,培養1週間後の抗体産生量を指標とした評価に基づき,MSCに由来するIL-6をはじめとする可溶性因子および未同定のMSCとPCとの直接的相互作用がPCの抗体産生能力に影響を与えることを突き止めて論文報告を行った(Kayaba A et al. Int Immu 2018)。本報告は,MSCがPCの維持に一定の役割を演じることを示した初めての報告であり,抗体産生の維持機構,免疫記憶の機構を理解し,その維持,改変技術の開発,という本研究課題の基盤となるものであった。さらにFCMで2つの分化マーカーによる選別を行ったMSCの集団は単細胞RNAシーケンス解析 (single-cell RNA-sequencing, scRNA-seq) から,さらに4つのサブポピュレーションに分類できることが分かり,MSCはヘテロな細胞集団であることが明らかになった。平成30年度はこれらの成果を踏まえ,PCに発現する制御性受容体,とりわけLILRB4(マウスgp49B)のPC維持機構における役割の解析に移行した。特に最近注目されているエキソソームとそれに包含されていると思われるLILRB4のリガンドについての探索に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画どおり,MSCとPCの共培養系により可溶性因子の同定,接触性因子の存在,さらに予想外にMSCがヘテロな集団であることを突き止め,論文報告を行ったうえ,接触性の因子としてのエクソソームの関与についての解析に着手したことにより概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度まで,PCを維持するニッチとして間葉系細胞,とりわけその幹細胞であるMSCに着目して研究を進め,MSCとPCとの直接的相互作用がPCの抗体産生能力に影響を与えることを突き止めた論文発表(Kayaba A et al. Int Immu 2018)を行なったが,31年度は未同定の直接的相互作用に寄与する細胞表面分子,とりわけPC表面上に発現する制御性受容体LILRB1/B2/B4(マウスPirBとgp49Bに相当)とそれに対応するMSC上のリガンドの実体を分子生物学的,生化学的手法により同定し,組換えタンパク質,遺伝子導入・欠損細胞により証明する予定である。最近特に注目されている細胞外小胞であるエクソソームはこれまで想定していなかった細胞間相互作用を行なっている可能性があり,これがMSCやPCから放出されているか否かなどを含め,解析を進める。
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