研究課題/領域番号 |
17K19541
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小田 ちぐさ 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50510054)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | エクソソーム / アレルギー / CD300a / バリア組織 / 樹状細胞 |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎、気管支喘息などのアレルギー疾患は、アレルゲンと、常在菌が存在するバリア組織(皮膚、気道、腸管など)との接触を起点とする免疫応答である。一方で我々は、骨髄球系の免疫細胞に発現する膜型受容体、CD300aが、アポトーシス細胞に表出してくるリン脂質である、ホスファチジルセリン(PS)に対する受容体であること、PSと免疫細胞上のCD300a受容体の結合が、アトピー性皮膚炎や気管支喘息を増悪させることを明らかにしてきた。また、皮膚、気道から、アレルゲンによって小型膜小胞(=エクソソーム)が分泌されること、及び、PSがエクソソーム上に恒常的に表出しており、CD300aと結合していることを見いだしていたことから、本研究では、エクソソーム-CD300aの結合から開始される新たなアレルギー性免疫応答の制御機構を明らかにすることを目的とした。 まずアトピー性皮膚炎に焦点を絞って解析を行った。マウスアトピー性皮膚炎モデルでは、アレルゲンに加え常在菌によって刺激を受けた皮膚から、エクソソームが分泌されていた。樹状細胞をエクソソームで刺激すると、CD300a遺伝子欠損由来の樹状細胞からはインターフェロンβが大量に産生されるが、思いもよらなかったことに、このインターフェロンβの産生は、常在菌によって刺激を受けたケラチノサイトからのエクソソームによる刺激では認められるが、ケラチノサイトの培養上清中のエクソソームでは認められなかった。一方で、常在菌由来の分子がケラチノサイトの分化、増殖を促進していることを見いだしたため、カラム分離法、質量分析法によってこの分子の同定を試みた。その結果、ある種の細菌特異的に発現するタンパク質であることが明らかとなった。現在、このタンパク質をケラチノサイトに添加した際のエクソソームの分泌量、及び樹状細胞からのインターフェロンβの産生を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、エクソソームによるCD300aを介したアレルギー性免疫応答の解明に焦点を当て、研究を行っていく予定であった。エクソソームに関して、当初の作業仮説とは異なり、予期しなかった結果を得たが、常在菌由来のタンパク質がエクソソー無の分泌に関わっているかもしれないという新たな知見を得られたため、概ね順調に経過している、と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、予期しなかった新たな知見もふまえ、以下の点に焦点を当て、研究を進めていく。 A) 常在菌由来のタンパク質の存在の有無による、皮膚からのエクソソーム分泌量の変化を解析する。 B) エクソソームとCD300aの結合阻害、及び無菌マウスを用いることによりエクソソーム上のPSとCD300aがどのようにアレルギーを増悪させているのかを明らかにする。 C)CD300aがエクソソーム上のPSと結合して、どのようなシグナルを抑制しているのか、エクソソームと樹状細胞上のCD300aの結合の時空間局在を解析するとともに、樹状細胞特異的にCD300aを欠損させたコンディショナルノックアウトマウス(作製済み)を用いて明らかにしていく。
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