研究課題/領域番号 |
17K19547
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
入江 直樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (10536121)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロキメリズム / 母児間免疫病 / 先天異常 |
研究実績の概要 |
妊娠中に起こるマイクロキメリズム現象は齧歯類やヒトを中心に広く観察されているが、細胞数の少なさや移入している細胞の種類の同定の難しさなどから、生体内、特に胎児側でどういった役割・影響があるのかはあまり理解が進んでいない。移入した母親細胞の役割として、母児間での免疫学的な衝突を避けるための免疫寛容誘導に重要な働きをしているという報告や、損傷を受けた組織の再生に寄与している可能性についても報告があるが、医学的観点から先天異常発症や増悪への関与の可能性が注目を集めており数多くの報告がある。申請者も胆道閉鎖症を中心とした研究から、母親細胞が胎児組織に免疫学的な損傷を直接・間接的に与えることで生じる先天異常として、母児間免疫病仮説という新しい概念を提唱した。しかし、これら従来研究はヒトを対象とした臨床研究が中心であり、ある疾患群において母親細胞が高頻度でみつかるという「相関関係」以上の研究には至っていないのが現状である。「ヒトでは不可能だった母親細胞を一掃した条件」を遺伝子改変マウスを用いて構築し、胆道閉鎖症モデルマウスに応用することで、母親細胞の先天異常発症と増悪への関与を検証することが大きな目的である。 本課題ではこの問題解決のため、母親細胞のみを選択的に除去できる(ヒトジフテリア毒素受容体を活用した)遺伝子組み換えマウスを作出することで、母親細胞が胎児側での組織障害に寄与しているのかどうかを検証する。今年度は、この遺伝子組み換え動物作出のための組み換えDNAの構築を行い、成功した。今後、このDNAを用いて当該実験動物の作出を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題において必要となる遺伝子組み換えマウスは、非常に低い頻度でしか存在しないため検出系となるGFPも組み込むことが必要である。また、マイクロキメリズム細胞除去に必要なヒトジフテリア毒素受容体を発現する細胞をすべての母親細胞から特定の母親細胞に将来的に切り替える可能性も考慮した、複雑なコンストラクトとなっている。こうした複雑なコンストラクトを作成するのは容易なことではなく、今年度に完成したのは順調な視点だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本課題ではこの問題解決のため、母親細胞のみを選択的に除去できる(ヒトジフテリア毒素受容体を活用した)遺伝子組み換えマウスを作出することで、母親細胞が胎児側での組織障害に寄与しているのかどうかを検証する。今年構築に成功した遺伝子組み換え動物作出のための組み換えDNAを用いて、当該実験動物の作出を行う。遺伝子組み換えマウス作出成功後は、胆道閉鎖症モデル系の誘導系において母親由来細胞を選択的に除去することで、胆道閉鎖症様の症状が増悪・寛解あるいは変化がないかを計画書通り検証していくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子組換え動物作出のためのDNAコンストラクト作成は非常に複雑なものであり、予算・時間ともに相当時間かかることを予想していたが、Golden-gate Assembly法によりずっと早く簡便に行う事ができたため、使用額に差が生じた。この次年度使用額は、実験に用いるマウスの数を増やし、生物学的反復データを増やすなどして結果の頑健性を高めるために用いる。
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