研究課題
ウイルスは限られたゲノムサイズに、多様な遺伝情報を搭載するため、進化上、様々な戦略(Ex. Leaky scanning, IRES等)を獲得してきた。その結果、今日の大規模転写物解析でさえ、ウイルスゲノムに潜む遺伝情報の全体像を解読することは不可能である。実際、インフルエンザウイルスは、1970年代にはゲノム配列が決定され、世界中で精力的に解析されていたにも関わらず、近年、重要な新規病原性遺伝子として、PA-Xが同定されている(Science 337:199-204. [2013])。したがって、ウイルス遺伝子産物の全体像を把握するには、「包括的に」ウイルス蛋白質を直接検出することが、理想的である。しかしながら、単純な質量解析では、数千種類の宿主蛋白質がバックグランドとなり、ウイルス蛋白質の全体像を検出することは困難を極める。これらの背景を鑑み、研究代表者は、一般にウイルスは宿主蛋白質の発現を抑制する活性 (Shut-off活性)を有するという特性に着目し、新規合成蛋白質精製法(BONCAT法) (Proc Natl Acad Sci U S A. 103:9482-7 [2006])と質量解析を融合させたChemical Proteomics解析を駆使することで、単純ヘルペスウイルス(HSV)がコードする遺伝子産物の包括的な直接同定を試み、HSVの病態発現を司る新規遺伝子を同定していた。本年度は、新規HSV遺伝子が、如何なる分子機構によりHSV病原性を司るのか、精製蛋白質を用いた再構築系、培養細胞系、HSV病態マウスモデル系等を用いて、詳細な解析を試みた。一連の解析の結果、新規HSV遺伝子は、uncompetitive activationというユニークな活性化様式により、HSV核酸代謝酵素を活性することで、HSVの病態発現に寄与していることが明らかとなった。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
NPJ Microgravity.
巻: 0 ページ: in press
doi: 10.1038/s41526-020-0104-1.
J. Virol.
巻: 93 ページ: e01290-19
doi: 10.1128/JVI.01290-19.
巻: 93 ページ: e00498-19
doi: 10.1128/JVI.00498-19
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/Kawaguchi-lab/KawaguchiLabTop.html