本研究は、申請者がこれまで行ってきた「線維芽細胞―免疫細胞相互作用」の解析を基盤に、腎臓の線維芽細胞に特異的な免疫学的働きとして新たに見出された「コラーゲン産生ミエロイド系細胞」の誘導機構についての解析を進めた。 腎線維芽細胞および腎ミエロイド系細胞(コラーゲン産生性・非産生性ミエロイド系細胞)の遺伝子プロファイリングから得られた結果から、コラーゲン産生能を保持したミエロイド系細胞は、TGFやPDGF等の線維化関連因子の発現が非常に高いことが示された。さらに、このミエロイド系細胞は、腎線維芽細胞によって骨髄由来前駆細胞から誘導もしくは増殖してくることが示されている。つまり、腎線維芽細胞は自身から産生する細胞外マトリックスに加えて免疫細胞に作用することで腎尿細管間質の線維化を促進している可能性が示された。さらなる詳細な定量的RT-PCRによる解析から、この細胞集団は間葉系細胞のマーカー遺伝子を発現していることが明らかとなった。そこで、間葉系マーカーを発現する血球系細胞のコンディショナル骨髄キメラマウスを作製した。このマウスモデルに腎線維化を誘導し、コラーゲン産生性ミエロイド細胞の除去を行うことで、当該細胞の線維化への寄与について解析を進めた。主に、コラーゲンの沈着並びに活性化線維芽細胞の増生ヘの影響について解析し、組織染色やフローサイトメトリーを用いてデータを蓄積した。その結果、腎線維芽細胞とコラーゲン産生性ミエロイド系細胞の相互作用が、線維化の促進に寄与していることが示され、この細胞間相互作用に係る分子群は新たな線維化標的に成り得ると考えられる。本研究から、新たな慢性炎症移行プロセスの一端が明らかとなった。
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