研究実績の概要 |
応募者はこれまでにトキソプラズマ原虫と宿主自然免疫系の相互作用研究を一貫して行ってきた。宿主側の研究について、インターフェロン(IFN)によりトキソプラズマ原虫の病原体含有膜を破壊する宿主因子としてGBPを同定した(Yamamoto M, et al. Immunity, 2012年)。さらにGBPやIRGが機能するために必要な宿主制御因子を検索した結果、正の制御機構としてオートファジー関連分子であるAtg7とAtg16L1が関与することを報告し(Ohshima J, et al. J Immunol. 2014年)。 以上のようにこれまでの宿主免疫学の研究から、応募者はトキソプラズマ原虫の寄生胞膜は細胞膜(自己)に由来するにもかかわらず、非自己として宿主免疫系に認識されうることから、寄生胞膜に着目してトキソプラズマ原虫と宿主細胞の相互作用を解析すれば、未だ不明な点が多い細胞内の「膜」の自己・非自己識別機構が明らかに出来るのではないかという研究構想に至った。 本研究で、正常細胞内では、インターフェロン誘導性の抗病原体因子GBPが細胞内に均一に配置すること、ゲノム編集法で作製したGate-16欠損細胞ではGBPが細胞内で凝集し不均一な配置となることで、トキソプラズマやサルモネラの病原体含有小胞上への蓄積率が低下し、病原体の効率的な排除が出来ないこと、Gate-16欠損マウスはトキソプラズマ感染に劇的に弱くなることを示した。本研究成果は、近年我が国においても症例報告が増加しているトキソプラズマ症やサルモネラ菌を原因とする食中毒に対して、Gate-16を標的とした新規治療戦略を提供できるものとして期待できる。
|