研究課題/領域番号 |
17K19561
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小柴 琢己 九州大学, 理学研究院, 准教授 (70403970)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 構造特性 / 改変 / ウイルス / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
生命機能の根幹を支えるミトコンドリアは、細胞質全体に管状の網様構造を形成・分布し、絶えず融合と分裂を繰り返すダイナミックなオルガネラである。このミトコンドリアの動的な構造特性が破綻すると、生命の高次機能にさまざまな悪影響がおよぶ。 本研究では、ミトコンドリアの「形」に着目し、その構造特性を人為的に改変することで、ミトコンドリア本来の機能発現、特にウイルスに対する自然免疫応答へどのような影響が及ぶのか、実験的アプローチで明らかにすることを目的とした。
該当年度は、ミトコンドリア内膜(クリステ)の構造改変を行い、その生理的な影響を調べた。具体的には、ミトコンドリア・クリステ構造の安定維持に関わるミトコンドリアGTPase・OPA1遺伝子の欠損細胞を用いて、RNAウイルスの感染実験による自然免疫応答や呼吸活性への影響を調べた。OPA1欠損細胞内におけるミトコンドリアの形態を透過型電子顕微鏡にて観察すると、明らかなクリステ構造の異常(崩壊)が確認できたが、この変異細胞にOPA1遺伝子を入れ戻すことで正常なクリステ構造の回復が観察された。実際に、入れ戻し実験によるクリステ構造の回復細胞では、ウイルス感染に伴った免疫応答や呼吸活性も正常レベルにまで回復していたが、不活性型OPA1遺伝子の入れ戻し細胞ではこのような機能相補は確認出来なかった。以上のことから、ミトコンドリア内部構造の自然免疫における重要性を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では、ミトコンドリア・クリステ構造の改変を遺伝子工学的に行い、その形態学的な影響を電子顕微鏡や蛍光抗体を用いた光学顕微鏡による観察から評価するまでの内容を該当年度の達成目標としていた。実際には、実験系の構築が予定より数か月早いペースで進み、その結果、クリステ構造の改変の生理的影響に関する解析を前倒しで進めることができた。最終的には、一年以上見積もっていた当初計画が該当年度内で完了することが出来たために計画以上の進展があったと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
該当年度は、ミトコンドリアの構造特性の中で、特に内膜のクリステ構造の役割に関する研究を中心に進めた。今後の研究の推進方策としては、ミトコンドリア内に存在する独自のゲノム(ミトコンドリアDNA)の役割を明らかにするために実験系の構築を進めていきたい。実際に、ミトコンドリアDNAの塩基置換はミトコンドリア病と密接に関係するために、疾患と感染症との繋がりに関する展望も踏まえて研究を進めていく予定である。
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