研究課題
ヒトゲノムには数多くの長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)遺伝子が同定されているが、その多くの機能は分かっていない。しかし、幾つかのlncRNAは、特定の疾患組織で過剰に発現することから、疾患マーカーとして利用されている。一方、lncRNAだと考えられていた遺伝子が短いペプチドをコードしている例が報告されている。ここでは、ヒトのlncRNA中に短鎖ペプチドをコードするショートORF(sORF)を発見し、それら由来のペプチドの検出とそれらの機能解析により、新しいペプチド疾患マーカーの開発を目指した。まず、lncRNAとしてアノテーションされている7,841種類のRNAについて、ribosome profiling法による翻訳活性とNMD耐性を指標に翻訳される可能性の高いRNAをスクリーニングした。その結果、翻訳されている可能性の高いRNAとして45種類のRNAを同定した。このうち、HeLa細胞で発現量が高かったLINC00493とLINC00998について、計算的に予想されたORFの翻訳活性をルシフェラーゼレポーターアッセイで調べた。その結果、ORFが翻訳活性を持つことを確認した。次に、LINC00493ペプチドミトがミトコンドリアタンパク質と相互作用するとの結果を質量分析実験から得た。さらに、このペプチドがミトコンドリアに局在することを免疫蛍光染色実験で確認した。また、プロテオミクスや比較ゲノムなどの公共データベースから短鎖ペプチドのコーディング性が示唆されるヒトlncRNAについて、コドンの出現頻度の統計的な偏りを明らかにした。そして、その偏りを隠れマルコフモデルでモデリングすることで、lncRNAの塩基配列からsORFを発見する計算機プログラムを開発した。さらに、このプログラムを上記の45種類のlncRNAに適用することで、短鎖ペプチドのコーディング性を評価した。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Encyclopedia of Bioinformatics and Computational Biology (Gaeta B, Nakai K, ed.)
巻: 2 ページ: 268-283