研究実績の概要 |
研究代表者は簡便で短期間に、且つ再現性の高い嚢胞状(直径10~25mm大)の子宮内膜症様病巣を形成するモデルマウスの作製に成功した。子宮内膜症の発症には炎症性サイトカインが関与することが従来から報告されている。平成29年度は、当該子宮内膜症モデルマウスを用い子宮内膜症の発症に関与するサイトカイン(IL-1,IL-33)とその細胞内シグナル伝達分子(MyD88,IRAK4)について検討し、以下のことを明らかにした。 A) 遺伝子欠損マウスおよび阻害剤投与による嚢胞様病変の発症抑制 移植後2週間目の嚢胞用病変の大きさ(体積)を野生型マウスと比較したところ、1) IL-1R欠損マウス、2) IL-33欠損マウス、3) IL-1/IL-33の細胞内シグナル伝達分子MyD88を欠損したマウスではいずれも有意に小さな病変形成がみられた。さらに4)抗IL-1R1抗体を腹腔内投与したマウス、5) IRAK4に対する阻害剤を経口投与したマウスでは、いずれも嚢胞様病変の増大が著明に抑制された。以上の結果から、「IL-1/IL-33とその受容体および細胞内シグナル伝達分子」は子宮内膜症の病態形成に関与することが明らかになった。 B) IRAK4阻害剤投与による嚢胞様病変に対する治療的抑制効果 嚢胞様病変の形成後(ドナー子宮片移植後2週目)からマウスにIRAK4阻害剤を2週間経口投与した。その結果、コントロールマウスでは嚢胞様病変が更に増大するのに対し、阻害剤投与マウスの嚢胞様病変は増大せず、縮小傾向を示した。以上の結果から、IRAK4阻害剤が子宮内膜症病変に対する治療的抑制効果があることが明らかになった。
|