研究課題
HIV-1のプロテアーゼ阻害剤 (PIs) は肝臓の代謝酵素であるCYP酵素の分解を受け易い為ブースターと呼ばれるCYP阻害剤と併用しなくてはならない。ブースターの併用は、細胞内のトリグリセリド (triglyceride; TG) の増加などの副作用が問題となる。本研究は、ブースターを使用することなく生体内で有効血中濃度を長期間維持、 QW 又は QM の投与で強力な抗 HIV-1 効果を発揮する化合物の開発を目的とした。当初の研究目標として ① CYP による代謝と化合物の構造活性相関の検討及び CYP 活性に抵抗性を有する構造の同定、② 同定した化合物をシード化合物とした合成展開、③ マウス又はラットを用いた生体内での薬物動態試験の実施を予定していた。実施項目①に関しては、平成29年度時点でに既に終了しており、P2領域にアルキルアミノ化されたTp-THF構造 (RHN-Tp-THF)、P2’領域にCp-Abt構造を有する化合物がritonavir (RTV) やcobicistat (COBI) といったブースターと同等のCYP耐性を有している事を明らかにした。平成30年度は、細胞内TGの増加と化合物の構造の相関を検討し、RHN-Tp-THF構造は細胞内TGの増加に対してほとんど影響しないが、Cp-Abt構造は細胞内TGを大きく増加させることが明らかとなった。現在、これらの結果は国際雑誌に投稿準備中である。本研究の平成30年度の進度は100%以上であり、本成果はブースターに依存せず一日一回 (QD) 又は 一週間に一回投与 (QW) 可能な新規PIs開発の基盤となる重要な成果である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
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